【珍しい登記申請】分合筆、合体、抵当権一部抹消ってどんな登記
登記申請手続としてはできるんですけど、実際に実務ではあまり行わない手続きについてお話をします。
このチャンネルでは土地家屋調査士の実務についての話をしているんですけど、事例の少ない事柄や例外的なことについては、
〇〇などとかいう表現でほぼカットして話しています。
あまり事例の少ないことまでお話をするとごちゃごちゃしちゃいますから、
事例の少ない登記についてはハショッています。
今回は、その事例の少ない珍しい登記申請にスポットを当ててお話をします。
珍しい登記申請についても内容がわかっていると、その場面にバッチリとハマったときには、
強い力を発揮することもあります。
ぜひ最後までご覧ください。
それでは珍しい登記申請を5つ紹介します。
1つ目は、建物の分割・区分・合併の登記
2つ目は、建物合体の登記
3つ目は、一部地目変更分筆の登記
4つ目は、土地分合筆の登記
5つ目は、分筆による一部抵当権抹消の登記
それでは
1つ目は、建物の分割・区分・合併の登記
建物の分割というのは、一つの登記記録に主たる建物と附属建物として登記してある。
この建物の登記を主たる建物と主たる建物の2つの登記記録に分割する登記を言います。
土地で言う分筆登記と同じような手続きになります。
一方、建物の合併の登記というのは、主たる建物と主たる建物の2つの登記記録で登記せれている建物を
主たる建物と附属建物とする1つの登記記録にまとめる登記です。
土地で言う合筆の登記のような手続きです。
これらの登記については、私も申請した経験がないので、実務ではニーズがほとんどないのではと思います。
あと建物の区分の登記については、これはたまに申請することがあります。
建物区分というのは、通常の1棟の建物全部を一つの建物として登記されているものを
マンションのように独立した部屋ごとに登記をすることです。
あるいは接続したいくつかの部屋をまとめて一つの区分建物といて登記することもできます。
賃貸マンションなどを相続して、長男、次男で分ける(区分する)場合があります。
また、税制上の都合で、区分建物として登記をして法人名義と個人名義に分けるということもあります。
そんなに多い事例ではありませんが、建物の区分の登記もありますので、
紹介させていただきました。
2つ目は、建物の合体の登記
2つ以上の建物を増築などでつなげて、
壁を取り除いた状態を登記では建物の合体といいます。
今まで5件くらい合体の登記申請をしていますが、事例としては少ない登記申請ということになります。
パターンとしては、町の工場です。
工場の人は、モノ作りのプロですから自分たちで工事して増築して、
建物同士をつなげていくということがあります。
建物の増築と合体を繰り返していきます。
そして、取引をしている銀行から現状と合うように建物を登記するように指摘をされたり、
新規で融資を申し込んだときに、現状と一致した建物の登記が融資の条件となります。
建物合体の登記の手続きとしては、
合体前の所有者が違う場合の持分割合の設定
抵当権などの登記がある場合は抵当権者の承諾が必要になる
所有者が亡くなっている場合には相続人の協議が必要になる。
所有者が同じで抵当権の設定もない単純なパターンもありますが、手続きが煩雑になりやすいということが言えます。
珍しい登記ということで建物の合体の登記を紹介しました。
3つ目は、一部地目変更分筆の登記
宅地とか畑といった地目というのは、土地の単位である一筆について1つの地目しか定められないと法律で決まっています。
一つの筆について2つ以上の地目がある場合は、分筆をしなければならないとされています。
例えば、一筆の土地が宅地として登記されています。
その土地の一部が道路後退が必要で、一筆の土地の中に宅地と公衆用道路の2つの地目になってしまった。
このような場合には、分筆一部地目変更の登記をしなければなりません。
通常の分筆登記と違うのは、法務局に報告する登記であるということです。
通常の分筆登記は共有者全員また相続人全員から申請するのに対して、
一部地目変更の場合は、共有の場合は、共有者の1人から申請することができます。
相続人の場合は、相続人の1人から申請することができるということになります。
ただ注意するのは、土地の現況の地目が変わっていないと地目変更ができません。
単に道路の拡幅の計画があるだけですと、一部地目変更分筆の登記はできません。
パターンがハマることが少ないので、珍しい登記ということになります。
一部地目変更分筆登記という手続きがあると言うことはわかっていると、その状況になった時には使える手続きということになります。
4つ目は、土地分合筆の登記
土地の分合筆登記というのは、分筆と合筆の登記を一回でできる登記です。
この分合筆登記については、1度も申請したことはありません。
実務としては、合筆の登記を完了した後に分筆登記を申請するという流れになります。
それは出来上がりの地積測量図の形状を意識しているからです。
先に合筆登記をして、一つに土地をまとめてから分筆をする。
最終的な土地の形状と地積測量図の土地の形状が一致しますので、
そのほうが地積測量図も見やすいので、良いかと思います。
それが分合筆登記ということになりますと、分割する土地の地積測量図だけが出来上がるということになります。
なので地積測量図だけを見ると一般の人にはわかりづらい図面ということになります。
ただ、合筆する側の土地の一部が境界確認ができないということになると分合筆が有効なパターンもあるかと思います。
一旦合筆する場合は、その筆全部、境界確認ができていないと行けないんですけど、
分合筆であれば合筆する側は境界確認ができなくても合分筆は可能です。
ただこのパターンにハマることが今までなかったので、分合筆の登記の申請をしたことはありません。
この分合筆の登記があるのをわかっているとイザというときに使えるということになります。
珍しい登記の一つとして紹介いたしました。
5つ目は、分筆による一部抵当権抹消の登記
抵当権の付いている土地を分筆する際に、
抵当権者の消滅承諾書を添付すれば、分割する土地については抵当権を設定しない分筆登記の手続きができます。
このパターンの登記というのは、一度しか経験がありません。
通常の登記では、まず分筆の登記を完了させます。
つぎに銀行に分筆後の登記事項証明書を提出して、抵当権抹消の承諾書を出してもらう。
そして分筆後の土地について抵当権抹消の登記をするというのが通常の流れです。
このパターンでないと銀行が抹消の承諾書を出さないからです。
基本的には、登記事項証明書がある土地でないと銀行は承諾書は出さないということです。
土地の一部分について抹消の承諾書を出すことはない原則はありません。
一度だけ分筆による一部抵当権の抹消を行った事例は、
農協さんが抵当権者で、完済していて実質の債務はないという状況です。
賢い地主さんだと実質は債務がなくても、登記には抵当権を残しておきます。
そうすることで、地面師対策であったり、あるいは身内が実印、印鑑登録証、権利証を勝手に持ち出して悪さをするといったことの防御策をとっています。
このように実質は、債権がなくて抵当権の登記だけが残っているということであれば、分筆による一部抵当権抹消という申請をすることもあります。
それでは振り返ります。
1つ目は、建物の分割・区分・合併の登記
建物分割、合併の登記については、ほぼニーズはないと思います。
建物区分の登記は、相続であったり、税制上の都合で登記手続きをすることがあります。
2つ目は、建物合体の登記
工場では、自社の工事で増築と合体を繰り返している事例が見られます。
合体前の所有者が違っていたり、抵当権の登記がある場合は、
手続きが煩雑になりやすいということが言えます。
3つ目は、一部地目変更分筆の登記
通常の分筆登記は、共有者全員また相続人全員で申請しないと行けないということになります。
一部地目変更分筆の登記については、共有者の1人あるいは相続人の1人から申請することができます。
4つ目は、土地分合筆の登記
地積測量図の出来上がりの状況を考えると合筆登記を完了させてから分筆の登記をするということになります。
但し、合筆する土地について一部、境界確認ができていない場合には、分合筆登記も有効なこともあります。
5つ目は、分筆による一部抵当権抹消の登記
通常は分筆の登記を完了させてから、抵当権の末梢の登記を行います。
実質、債務がない場合には、分筆による一部抵当権の末梢の登記を行うこともあります。
以上、参考にしていただければ幸いです。