宅地分譲住宅に必要な【位置指定道路】の申請について
宅地分譲をする場合には、各宅地に接道義務が生じます。
すべての宅地を道路に接するようにするために私道を築造して、道路位置指定の申請をすることがあります。
ただし土地の面積が一定規模以上の場合は、位置指定道路ではなく都市計画法の開発許可が必要になります。
今回は、宅地分譲住宅に伴う位置指定道路の話をします。
この動画を見ていただければ、位置指定道路の形状、構造、承諾が必要な範囲、都市計画法の開発許可との違いがわかります。
ぜひ最後までご覧ください。
今回の話は、あくまでさいたま市の位置指定道路の基準についてお話をします。
各地域の行政で、微妙な違いはあります。
この動画を参考にしていただいて、詳細については実際に手続きをする行政で必ず確認をしてください。
位置指定道路の3つのポイントをお話します。
1つ目は、位置指定道路の承諾が必要な範囲について
2つ目は、位置指定道路の形状と構造について
3つ目は、位置指定道路と開発許可との関連について
それでは、
1つ目は、位置指定道路の承諾が必要な範囲について
位置指定道路の申請にあたっては、一定の利害関係人の承諾が必要になります。
①位置指定道路の所有者の承諾が必要です。
共有の場合は、共有者全員の承諾が必要になります。
位置指定図の承諾欄に、実印を押印して印鑑証明書を添付します。
②位置指定道路の抵当権者などの権利者の承諾が必要です。
位置指定道路の所有権以外の権利者の承諾も必要になります。
抵当権、根抵当権、仮登記名義人などの登記が位置指定道路内の土地にある場合は、
位置指定図の承諾欄に実印を押印して印鑑証明書の添付が必要です。
③位置指定道路に沿接する土地、建物の所有者
位置指定道路に接する土地、建物、工作物の所有者の承諾欄に署名捺印が必要です。
この場合は、住所、氏名、承諾年月日を本人が自署した場合には、認印で印鑑証明書を添付しないことができます。
また、25センチの幅を設けて位置指定道路と離すことで承諾は不要にすることができます。
この場合は、道路との間に塀、柵などを設けて道路が明確に接しないように明確にする必要があります。
位置指定図を押印ごとに複数枚に分けてよいか?
ということについてです。
通常は、一枚の位置指定図に全員分の承諾の署名捺印をいただくことになります。
承諾欄に、書ききれない場合には、別紙に署名捺印をして位置指定図と綴って割り印をするということになります。
承諾が必要な人が4,5名であればいいんですけど、場合によっては承諾をもらう人数が20名、30名にわたることもあります。
その場合に位置指定図1枚に承諾をもらうのがすごく時間がかかります。
例えばAさんに承諾をもらって、つぎにBさんにもらいに行って、そしてCさんに承諾印をもらう。
これを20人、30人繰り返すとすごい時間がかかります。
これがもし位置指定図を複数枚に分けられれば、Aさん、Bさん、Cさんに同時に承諾印の手配ができることになります。
承諾書が揃うまでの期間がグッと短くになります。
ほとんどの市区町村では、位置指定図1枚で承諾印をもらうように言われますけど、
位置指定図を数枚に分けたという経験もあるので、一応は交渉する価値はあるのかと思います。
これは委任状でも、申請書でも、何でも同じなんですけど、
一枚の書類に5人とか10人の署名と捺印をもらうにはすごく時間がかかります。
これを書類を5枚とか10枚に分けて一度に書類を手配すれば短い期間で済むということになります。
もちろん複数枚に分けられない書類もあります。
書類を分けられるときには、1枚にまとめないで複数枚に分けるのが有効です。
2つ目は、位置指定道路の形状と構造について
①位置指定道路の形状
・幅員については、4.0m以上です。
実際には、境界杭の設置誤差、工事の施工誤差を考慮して、4.005mのように5mm程度余計に幅員が取れるように計算しています。
現地でメジャーで測定した際に、3.99mしかないとなると検査で合格できないということになりますので、
確実に4.0m以上を確保するということで誤差分を考慮して余計に5mm程度を取って、幅員を4.005mのように設定します。
また幅員4.0mでは車のすれ違いが難しい。また車庫入れも難しいので、幅員を4.50m、5.0m、あるいは6.0mのように多く幅員を取ることもあります。
②隅切りの形状
交差点や屈曲点については、隅切りが必要になります。
形状については2.0mの二等辺三角形です。
屈曲点についても、2.0mの隅切りが必要ですが、角度が120°以上の場合は隅切りが不要です。
交差点に水路や歩道がある場合は、水路、歩道の幅が2.0m以上であれば隅切り不要です。
仮に水路、歩道の幅が1.5mであれば0.5m分の隅切りは必要です。
交差点で片側にしか隅切りが作れない場合は、3.0mの二等辺三角形です。
③回転広場
位置指定道路は、有効な道路から道路に接続する通り抜けが可能になるのが理想です。
実際には、袋地状になることがほとんどです。
袋地状の位置指定道路の条件としては、
・延長が35m以下であること
・延長が35mを超える場合は、回転広場を設ける必要がある
・幅員6m以上の場合は、回転広場は不要です。
④位置指定道路の構造
まず、電柱についてです。
位置指定道路内に、電柱を設けることはできません。
電柱は、道路内ではなく宅地内に設置する必要があります。
設置の位置については、東京電力、NTTと協議して決めます。
つぎに、L型側溝です。
道路の両サイドは、U字側溝もしくはL型側溝を使います。
L型側溝の場合は、切り下げタイプのものを使います。
通常のL型は、上がった部分が10センチなんですけど切り下げタイプは、5センチまたは2センチです。
通常の10センチのL型の場合は、上がった部分を認定幅員に含めることはできません。
U字側溝で、底が抜けている浸透式のU字側溝もあります。
浸透式の場合は、数年経過すると匂いが上がってくるらしくて、評判が悪いので行政から浸透式の指定がされない限りは使用しません。
道路の終端部分については、U字側溝、L型側溝で施工するかもしくは地先境界ブロックを使用します。
そして、アスファルト舗装です。
道路構造については、ぬかるまない構造となっています。
砂利敷でも大丈夫ですが、アスファルト構造にするのが一般的です。
位置指定道路の検査までを砂利敷にして、検査後にアスファルトを敷く業者もあるようです。
この手法だとU字溝やL型の高さまで敷き詰めた砂利を撤去しなければならないなどの不都合があります。
私のところでは、アスファルト舗装で検査を受けています。
アスファルトについては、密粒アスファルトと浸透性アスファルトがあります。
雨水をはじくか、浸透するかの違いですが、特に指定がなければ密粒アスファルトを使っています。
⑤前面道路(公道)の構造について
位置指定道路をつくる場合には、前面道路についても工事が必要です。
これについては、さいたま市内でも地域によって取り扱いが違います。
さいたま市内の南部地区の取り扱いということでお話します。
位置指定道路の乗り入れ口については、車の乗り入れに耐えられるよりU字側溝ということになります。
U字側溝の蓋については、グレーチングと言ってスチール製の網になっているものをZアングル状でボルト止めしたものを使います。
乗り入れ口の両サイドは、集水桝を設けます。
掘削した道路の復旧については、50センチの幅で復旧します。
砕石アスファルトの厚さについては路線によって基準が違います。
簡易舗装、中級舗装、高級舗装など別れていて、それぞれ砕石の厚さ、アスファルトの厚さが違います。
それぞれ基準に応じて工事する事になります。
工事に際しては、施工前、施工中、施工後の写真の提出が必要です。
完了後は工事完了届を提出して完了となります。
3つ目は、位置指定道路と開発許可との関連について
建物の建築を目的とする土地の区画形質の変更で、市街化区域内では政令で原則1000㎡以上、
三大都市圏の一定地域では、500㎡以上では開発許可が必要になります。
つまり、さいたま地域では宅地分譲で500㎡を超えると原則は開発許可が必要になります。
位置指定道路の場合は、道路部分と利用宅地、ごみ集積所などを含めて500㎡未満ということになります。
500㎡を超えた場合は、位置指定道路ではなく都市計画法の開発許可が必要となります。
ここで問題になるのは、開発許可が必要な開発行為の一体開発という解釈です。
業者さんとしては、審査の厳しい開発許可ではなく位置指定道路で申請したいところだと思います。
開発許可の場合は雨水の処理方法、宅地の面積、道路の幅員などの基準が変わります。
そこで問題になるパターンです。
①宅地分譲地で、名義を分けるという方法です。
400㎡を法人Aの名義、あと400㎡を法人Bの名義にする。
それぞれで500㎡未満であるから、
開発許可ではなく位置指定道路の申請で行けるのではないかという問題です。
この場合については、客観的に見て一体開発ですから開発許可が必要になるということになります。
ただし、この辺は市区町村で、だいぶ厳しさというのは変わってきます。
同じ地主から同時期に購入した時点で、一体開発となりますとか、
法人Aと法人Bで役員が同じ人がいると同族会社とみなして一体開発になる場合もあります。
その辺のことは事前に確認をしておく必要があります。
②工事時期をズラした場合はどうなるかということです。
位置指定道路の申請のときに、一部を未利用地として申請して、位置指定の手続きを完了した後、
6ヶ月後とか1年後に、未利用地について工事を行う場合です。
この場合も、一体開発とみなして開発許可が必要になります。
未利用地について、建築確認申請を提出した時点で、開発許可が必要ということになります。
あとが結構大変なことになるので注意が必要です。
ただし、これについても市区町村で一体開発の解釈は、だいぶ違います。
位置指定道路の告示の日から、1年経過した後に建築確認申請が提出された場合には、
一体開発とみなさないという市区町村もあります。
この辺は、ザックリ聴いて事前に役所に確認することが大事です。
③位置指定道路の未利用地について、上下水道の工事を行ってよいか?
工事時期を分ける場合や名義を変えることで、一部を未利用地として、位置指定道路を申請することもあり得ます。
その場合に、一度で未利用地を含めて上下水道の工事をしたいということもあろうかと思います。
ただし原則は、未利用地について上下水道の工事はできません。
あくまでも利用宅地のみについて上下水道の工事を行って、
未利用地については必要になったときに、再度道路を掘削して工事を行うことになります。
どうしても一緒の時期に工事をするということであれば、担当課の下水道課、水道局と交渉するということになります。
この辺は、うまくやらないと工事がやり直しになったり、市の指定業者としてのペナルティーを受けるなんてことになりかねません。
この辺は慎重にやられたほうがよろしいかと思います。
このようにグレーゾーンの部分については、ザックリ役所で聴いてみる。
事前相談票などがあれば提出してみる。
ということが必要です。
今までは問題にならなかったことが、建築指導課、下水道課、開発指導課などの長が変わることで急に厳しくなるということもあります。
この辺は、慎重に進めていく必要があります。
そのほか位置指定道路の申請に際しては、隣接して既存建物がある場合は、その建物が既存不適格にならないか注意が必要です。
特に、道路高さ(斜線)制限については要注意です。
他の動画で解説していますのでそちらも御覧ください。
位置指定道路と利用宅地については分筆登記が完了している必要があります。
宅地分譲住宅に必要な位置指定道路の知識ということでお話しをしました。
さいたま市の基準をもとにお話をしましたが、市区町村によって微妙に取り扱いが違います。
この動画を参考にしていただいて、実際に手続きをする市区町村でご確認ください。