土地家屋調査士【分類】あなたは資産管理系?融資系?建築系?分譲系?売買系?

土地家屋調査士に仕事を依頼するお客様は、何らかの目的を持って来ているわけです。
銀行で融資を受けたいとか、住宅を建築したいとか、不動産を売却したいといった目的があります。

その目的を達成するために、土地家屋調査士に仕事を依頼するわけです。

土地家屋調査士としては、その依頼人からよく聴き取りして、目的に合わせた仕事のご提案をさせていただきます。

今回は、依頼の目的を5つに分類して、それぞれ誰が依頼してきて、どのような提案をするのか、また注意したいことをお話します。
依頼をする立場の人は、どのようなことを伝えなければなないのかがわかります。
依頼を受ける側としては、お客様の満足度が上がります。
ぜひ最後までご覧ください。

どーも(^^)
開業20年、土地家屋調査士、杉山です。
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よく例え話として使われるのは、「ドリルを買いに来た人は、ドリルではなく、穴を欲しがっている」という話です。
ホームセンターにお客様が店員に「ドリルがほしいのですがどこにありますか?」と聞きます。
店員Aさんは、「こちらにございます。」お客様を案内する。
一方、店員Bさんは「ドリルはどのようにお使いですか?」とドリルを買う目的を確認します。
壁に穴を開けるのか?木に穴を開けるのか?それともコンクリートに穴を開けるのか?
そして店員Bさんは、お客様の目的にあった商品をおすすめします。

つまり、お客様は、その商品自体が欲しいというよりも、その商品の効果、得られる満足が重要ということになります。
ドリルで穴を開けたい人は、どのような穴を開けたいと考えているのか?
しっかりと依頼人のニーズを聴き取りをすることが重要になります。

土地家屋調査士の仕事で言えば、依頼主が20年前に建築した自宅が未登記になっているので登記をしたいと依頼されたとします。

この場合の建物表題登記はドリルであり、登記することにより得られる結果が穴です。
依頼人は必ず何らかの目的を持って、依頼をしてきています。
その依頼の目的を聴き取りをすることで、目的に合わせたご提案、仕事をすることが出来ます。

・将来の相続に備えて、長男にスムーズに相続させるために準備しておきたい。
・土地を借りていて、借地権の対抗要件を備えておきたい。
・融資を受ける条件として、銀行から建物表題登記をするように言われた。
・売却をするために登記をしておきたい。

そういった目的を確認しておく必要があります。
今回は、土地家屋調査士の仕事の目的を5つのパターンにまとめて、どのようなことに注意して仕事をすすめるのかをお話します。
1つ目は、資産管理系
2つ目は、融資系
3つ目は、建築系
4つ目は、分譲系
5つ目は、売買系
の順でお話をします。

1つ目は、資産管理系
借地上の建物を登記したい
細かく土地の筆が別れているので合筆登記をしたい
境界があいまいでハッキリしたい
あるいは相続対策として事前に登記をしておきたい。

弁護士さんや税理士さんから紹介されたり、地主さんから直接依頼を受けることもあります。
依頼者の目的をよく聴き取りをして、納得いただけるように仕事をするか、
もしくは依頼を受けても依頼者の目的を達せられる可能性が低い場合は依頼をお断りすることがあります。

依頼人の主張が、相手方(隣地所有者)の主張が相違する。
そうしたことはよくあります。
まずは依頼者さんに、調査、測量をした結果が必ずしも、あなたの意向に沿うとは限りません。
ということをお伝えします。
塀を作った経緯、境界標などの有無、測量図などの資料から依頼人の目的を達せられない場合には、依頼を受けないこともあります。

2つ目は、融資系
銀行で住宅ローンの借り換えであったり、事業資金として借り入れをする場合に融資を受けるのに条件が付きます。
・地目を畑から宅地に変更する
・建物の種類を「居宅」に変更する
・未登記の建物があれば現状に合うように登記をする
そういった話が、司法書士さん、銀行さんから紹介されるか、あるいは所有者さんから直接依頼されます。
こうした融資系の仕事で注意することがいくつかあります。

地目で田や畑があれば、農地法の適用から外す必要がある。
区画整理中また現地の状況など地目変更ができない事情があれば、その旨を説明する。
場合によっては、地目変更ができない理由書を提出して、融資の審査をしやすいようにする。

建物の種類変更の依頼の多くは、住宅ローンを使った借り換えや中古建物の売買で買主さんが住宅ローンを使う場合です。
「店舗・居宅」を「居宅」に変更するということが多いです。
店舗の機材等が残っている場合には、居宅として認定できるように現況を変更していただく必要があります。

登記されていない建物がある、増築したけど増築部分を登記していないという場合には、
現状に合うように建物の登記を行う必要があります。
銀行で融資を受ける場合には、その敷地上にある建物は原則は、すべて登記します。
簡易な物置であったとしても、それが登記の対象になる建物であれば登記します。
これは将来、債務者が返済できなくなった場合には、担保物件を競売にかけることになります。
このときに未登記の建物があると問題があるからです。

また銀行の場合は、違法建築物については原則融資はしないことになります。
建物の調査をして、建ぺい率、容積率に違反する場合には登記する前に関係者と打ち合わせが必要です。

以上が銀行融資に関連して仕事をするときの注意事項ということになります。

3つ目は、建築系
建物を建築するにあたって、建築確認済を取得する目的で測量の依頼を受けることがあります。
設計士さん、工務店さん、ハウスメーカーさんからご紹介いただくということになります。
境界確認を伴わない現況測量の場合もありますし、最近では境界確定測量まですることが多いです。

建築系の測量で注意することについていくつかお話します。
測量と一緒に依頼を受けることが多いのは、高低差測量、真北図の作成です。
高低差測量については、建築する土地について数ヶ所の高さを測定するほか、道路、隣地との高低差を測定します。
真北の測量については、以前はトランシットにフィルターを付けて太陽を直接観測する方法で測量をしていました。
最近では、公共座標の座標値から真北方向角を算出しています。
ただしクライアントによって、太陽観測をした計算書を提出してくださいと言われることもありますので、事前に確認が必要ということになります。

つぎに現況測量です。
何を測定するのか確認しておく必要があります。
ブロック塀等の構造物、隣地の建物、場合によっては隣地建物の窓の位置
道路内の構造物、マンホール、標識、電柱、側溝、歩道の位置などどこまで測定をするのか。

幅員が4m以下の狭い道路(2項道路)については、道路中心線の測量も必要になることがあります。
通常は道路の境界線から、中心を計算して中心線から2mセットバックすることで足ります。
ただ市区町村によっては、境界とは別に中心線の協議が必要なことがあります。
セットバック部分、道路中心のポイントの明示や分筆が必要な場合は、道路境界とは別段の協議(建築指導課など)が必要か確認をする必要があります。

建築系の仕事について、注意することをお話しました。

4つ目は、分譲系
宅地分譲の仕事についてお話します。
開業当初は、宅地分譲の仕事で売上を伸ばしていったという経緯があります。
私自身、宅地分譲の仕事は好きなんですけど、
どうしてもスケジュール感が厳しかったり、
発注者が分譲業者さんになりますので価格競争になりやすい。
あとは景気に左右されやすいというデメリットがあります。

そういうことで最近は、分譲系の仕事は大分、事務所全体の仕事の比率を減らさせて頂いています。
分譲系の仕事の注意点をお話します。

まずは、境界を設置したあとの美しさ
土地の境界については、当然売買のときにエンドユーザーさんへ説明します。
そして境界は、分譲して10年後も、20年後も、30年後もずっと残るものです。
曲がっていたり、斜めになっていたり、欠けているのはとても残念です。
境界を美しく設置することはとても大切です。

つぎに、区割りのセンスが必要
分譲業者さんの要望を聴きながら、売りやすい宅地分譲を計画します。
これが土地家屋調査士で一番の差が出るところだと思います。
方位、面積、宅地の幅などを考えて利用しやすい分譲プランを考えます。
詳しいことは、他の動画で話をしていますので、そちらでご覧ください。
https://youtu.be/yiPW41nl1GY?list=PLXU88U9fFc8lxfPhD9nsSuum1_vUZHBOZ

そして、隣地がどういう人かよくわからない。
一般的な流れとしては、地主さん(売り主)のほうで境界確定測量をします。
宅地分譲業者さんは、確定測量済みの土地を購入して、土地家屋調査士に分筆などの手続きを依頼します。
分譲業者さんから依頼される土地家屋調査士としては、境界立会をした経緯というのはわからないわけです。
大モメにモメて確定したかもわかない。
隣地の人がものすごく神経質な人かもわからない。
前に確認した土地家屋調査士と何かしら約束事があって、こちらに伝わっていないかもわからない。
何もわからないところからのスタートになります。
隣地の人に測量のご挨拶をして、コミュニケーションをとっていくのが大切です。

以上、分譲系の仕事についてお話です。

5つ目は、売買系
不動産の売却に伴う仕事は、ほとんどの場合には不動産業者(仲介業者)から所有者さんを紹介されて仕事をします。
中古住宅の場合は、未登記の建物があれば表題登記が必要です。
地目が田・畑などの農地の場合には、農地法の手続き、地目変更登記をします。
売買契約の条件として、境界確定測量が必要になることがあります。
不動産の売買に伴う依頼のときに注意することについてお話をします。

まず、中古の建物の売買について未登記建物がある場合は表題登記が必要です。
売り主さんの名義で表題登記をして、買主に所有権移転登記をするか、
もしくは買主の名義で直接、表題登記をすることになります。
この場合は売り主の所有権を証明する書類と買主に売り渡したことを証明する書面を提出して申請します。

つぎに、農地の売買、地目変更をするには、農地法の手続きが必要です。
また銀行融資を受ける場合には、農地の地目変更は必要です。
単に所有権の移転をするだけであれば、農地法5条の手続きだけで地目変更までしないこともあります。
ただし、農地の場合はできるタイミングで地目変更しておいた方がいいです。
地目が農地だと、A→B→Cと転売するたびに農地法が絡んできます。
できるだけ地目変更をして、農地法から切り離すということが重要です。

そして、売買に伴う境界確定測量です。
買主が不動産業者の場合は、ほぼ境界確定測量が必要です。
測量費用は、ほとんどの場合は売り主さんの負担です。
まれに買主が負担することもあります。
注意することとしては、隣地からの越境物があるかの確認、
前面道路が私道の場合は、掘削承諾などの書類は必要になるのか。
ということに注意しています。

以上が売買系の依頼の注意事項です。

仕事をするということは、今、依頼者さんが抱えている問題を解決することなんです。
単にドリルを提供するということではなく、どうしたら依頼者さんが求めている穴を開けられるかを考える。
地目変更登記を依頼されたら、単に登記を申請して完了すれば良いということではなく、
その背景にある銀行融資、不動産の売却、宅地分譲ということを意識して仕事をするということです。

相手が求めていることを感じながら仕事をするのは大切です。
ただし、必要以上に責任を取る必要はないと思います。
建築や不動産売買などで、結果としてうまく行かないときもあります。
こちらとしては、依頼された登記申請、測量に問題なく行っていれば、必要以上に責任を感じる必要なないと思います。

依頼人の目的を意識しつつ、過度な責任意識を保つ必要はありません。

参考にしていただければ幸いです。