土地の境界線ってなに?

隣の人から境界線の確認を頼まれたんだけど、
境界って、どうやって判断するの?
隣の人が境界杭を動かしてしまったらどうなるの?
そもそも境界ってなんなの?
今回は土地の境界線についての話をします。
この動画を見ていただければ、境界の問題があったときにある程度の理論武装をすることができます。

どーも(^^)
開業20年、土地家屋調査士、杉山です。
このチャンネルでは、土地家屋調査士としての経験、知識、考え方をお話しています。
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最後に視聴者さんのコメント欄の質問にランダムで答えますので最後までお付き合いください。

それでは5つのポイントで説明をします。
1つ目は、境界(筆界)とはなにか
2つ目は、境界の種類、筆界と所有権界
3つ目は、境界はどうやって判断するの?
4つ目は、境界標を隣の人が抜いちゃった
5つ目は、境界標の種類はなにがあるのか

1つ目は、境界(筆界)とはなにか
明治時代に租税を徴収するため、また土地の取引のために、土地ごとに地番がつけられました。
その地番と地番との境目が筆界です。
筆界というのは土地の公法上の境界線で、所有者の意思で位置が変更することはありません。

また、土地の筆界はすべて明治時代に定められたものではなく、新しく筆界線が作られることがあります。
区画整理や耕地整理を行うと最終的に換地処分と言って、新しく筆界線が作られる。
そして分筆登記をすることでで新しく境界(筆界)が作られることもあります。

筆界というのは、創設された当初の原始的な境界を言うのです。
所有者の都合で、境界を変更する場合には、分筆登記、合筆登記によって行うこととになります

2つ目は、境界の種類、筆界と所有権界
筆界は、地番と地番との境界ですが、
所有権界は、土地の所有権の境目です。
通常は、筆界と所有権界は同じ位置です。

しかしまれに、筆界と所有権界が違うことがあります。
2つのパターンを紹介します。
①時効取得のパターンです
時効取得は、10年または20年の期間、一定の要件を満たして土地を占有した場合は、
その土地の所有権を取得することができます。
本来の筆界線を超えて隣地側に、物置や工作物、建物本体が越境している。
そして長期間に渡って、占有している場合には、その土地の所有権を取得します。
時効によって所有権を取得したことで、筆界と所有権界が違う位置になります。

②売買や交換をしたけれど登記をしていないというパターン
公図と現地で形が違うんですけど、どういうことなのか?
公図では鍵状になっているが、ところが現地ではまっすぐに塀で区画されている。
所有者同士の話し合いで、鍵状だとお互いに使い勝手が悪いので、利用しやすいように、
まっすぐに交換しましょうということがあります。
現地には、塀をしたけど登記をしていないというパターンです。
本来は、塀の位置で分筆の登記をして、交換の所有権移転登記をしないと行けないんですけど、
登記をしていない。
そうなると土地の交換自体は、登記をしなくても有効です。
筆界としては、鍵状であって、所有権界は塀の位置ということになります。

意外とこのケースは多いです。
先代が話し合いで交換をして、子や孫にそのことが伝わっていないということもあります。
測量をして、公図と形状が違うことが判明する。
そして分筆をして所有権移転登記をするということがあります。

3つ目は、境界はどうやって判断するの?
境界を判断する上で、公図以外は何も資料がない。
など境界の判断が難しいこともあります。
何を持って境界を判断するかですが、判断材料は大きく分けて、
人証、物証、書証があります。

①人証
所有者、借地人、借家人など関係者の証言
境界に異議がある場合は、その理由
先入観を持たず、公正、中立の立場で聴き取りをする。

②物証
塀、生け垣、既存の境界杭、境界木があるのか?
それらを設置した経緯
だれの所有物かを確認します。

③書証
公図、旧公図、固定資産税の公図、地積測量図、私的な図面や契約書や覚書、
立会証明書や境界確認書、
道路や水路や公園など公共用地の管理図、
区画整理や耕地整理が行われている場合は換地確定図
国土調査が行われている場合はその成果
建築設計の敷地図、建築概要書、位置指定道路の図面
戦災復興による区画整理図
東京都内だと戦災復興図が管理されていることがありますので確認します。
航空写真

などが挙げられます。
これらの図面や書面から
境界点間の辺長、面積、直線性を参考材料にします。
そして、人証、物証、書証を総合的に判断して境界を認定します。

4つ目は、境界標を隣の人が抜いちゃった
境界杭を隣の人が抜いてしまう。あるいは自分の敷地が広がるように動かす。
そういったことが実際にあります。
その場合は、刑法の境界損壊罪という罪になります。

刑法262条の2の規定です。
境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、
5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
とされています。

境界損壊罪の適用以外にも、器物損壊罪、不動産侵奪罪でも罰せられる可能性もあります。

境界が動いてしまった、あるいは隣の人が動かしてしまった。
という場合には、その証拠という意味では難しいこともあります。
もし、不安があれば、
まず、境界標の写真を撮影して、塀などの構造物との位置関係をわかるようにしておく。
つぎに、測量をして図面と境界を確認した書類を取り交わす。
さらに、地積更正登記や分筆登記を申請して図面を法務局に提出して公的なものにする。
ということが考えられます。

実際に、境界標を動かされてしまった後だと、
筆界特定制度を申請、境界確定訴訟などをすると時間とお金もかかるし大変です。

思ったとき、問題が起こる前に、行動するようにしまよう。

5つ目は、境界標の種類はなにがあるのか
素材としては、石杭、コンクリート杭、プラスチック杭、金属プレート、金属鋲、木杭などがある。
杭の表示としては、主に十字のもの、矢印のもの、マイナスのものなどがあります。
それでは、それぞれ特徴についてお話します。

①石杭
材質は御影石で、堅固でコンクリート製の杭と違って、杭が欠けたり途中で折れたりしているのは見たことがありません。
東京都内で、古い石杭をよく見かけます。
多いのは石杭の中心付近にくぼみがあって、そのくぼみが境界点でです。

②コンクリート杭
境界標については、できるだけコンクリートの杭を設置するようにします。
杭の長さや標識面の大きさは、さまざまです。
一般的に多く使われているのは、杭の長さが60cmで標識面が9cm角のものです。
埋設するときに、周りをコンクリートで固めることで、より動かない定着性のある境界標になります。

③金属プレート
金属プレートは、ボンドで貼り付けるタイプ、ボンドとアンカーで固定するタイプ、脚付きで周りをモルタルで固定するタイプのものがあります。
用途によって使い分けます。
ドリルで穴を開けられないところでは、ボンドで貼り付けるタイプのプレートを使います。
道路側溝の上などは、ドリルで穴を開けてボンドとアンカーで固定するタイプです。
地中に障害物があり、杭が設置できないところや境界ポイントが土間コンクリートにあたる場合は、脚付きで周りをモルタルで固定するタイプのプレートを使います。

④木杭
木杭は、仮の境界ポイントとして使います。
境界立会のときに仮のポイントとして見てもらって、隣地所有者さんの承諾があれば、
永続性のあるコンクリート杭などを設置します。
また造成工事がある現場では、境界標を設置しても工事で、動いていしまったり、破損してしまいます。
なので最初の段階では、木杭を設置して、木杭の位置に合わせて、地盤調査、道路の築造、上下水道の工事を行って、
工事の進捗状況に合わせて、永続性のある境界標を設置するという使い方です。

⑤境界標の表示について
境界標の頭の部分は、主に十字のもの、矢印のもの、マイナスのものがあります。
それぞれ意味が違いますので説明をします。
まずは、十字の境界標です。
見た通り十字の中心が境界です。
似たような杭として、T字のものや、L字のものもあります。
T字のものは3方向の境界として、L字のものは境界の角に設置する感じで、
境界線の方向に合わせて設置をしています。
ただ一般的には、3方向の境界、角の境界でもT字やL字ではなく十字の境界を使用します。
さらに言うと真ん中がくぼんでいるもの、あるいは何のしるしもないノッペラボウもあります。

つぎは、矢印の境界標です。
矢印の杭は、まっすぐの矢印になっている杭と、斜めの矢印になっている杭があります。
まっすぐの矢印のものは、杭の側面が境界です。
斜めの矢印のものは、杭の角が境界です。
矢印の先端と、杭の側面、角が一致しない杭もあります。
その場合は、矢印の先端ではなく、杭の側面また角が境界です。

そして、マイナスの境界標です。
マイナスの杭は、方向を示す境界標です。
排水桝やU字溝、建物などの障害物があって、
境界のポイントに境界標を設置できない場合に境界の方向線上にマイナスの杭を設置する。
図面を見ると詳細図があって方向杭から○○cm先が境界ポイントとわかるような記載します。
あるいは、一部境界が未確定の場合も、確定している境界の方向線ということで、マイナスの杭を設置することもあります。

以上、参考にしていただければ、幸いです。

最後に視聴者さんの質問に答えます。

Q:施工管理の経験しかありませんが
30代からキャリアチェンジは有りでしょうか?
A:
キャリアチェンジされるという不安はあると思います。
未経験ということですが、土地家屋調査士の事務所で働いて
おおよそ3年から5年くらいで、一通りの実務経験を積めます。

年齢的な不安もあるでしょうが、40代、50代でキャリアチェンジされる人もたくさんいます。
土地家屋調査士というのは、年齢層の高い職業です。

土地家屋調査士の年代別の構成比で言うと
20代:54人(0.3%)
30代:1011人(6.1%)
40代:3852人(23.4%)
50代:3351人(20.3%)
60代:4662人(28.3%)
70代:2938人(17.8%)
80代以上:625人(3.8%)
となっています。

また、令和2年度の土地家屋調査士試験の合格者の平均年齢は、
40.02歳と決して若くして取る資格ではありません。

大変だとは思いますが、技術と知識に加えて資格を取得すれば、一生ものの職業です。

ぜひチャレンジしてください。