【びっくり!】日本橋のバーコード分筆について土地家屋調査士が解説!

東京の日本橋で、83.63㎡の雑居ビルの敷地について、細長く30筆に分筆がされました。
その形状がバーコードに似ているということで、日本橋バーコードと言われています。
なぜこのような分筆登記が行われたかと言うと、再開発事業をするにあたって、地権者の3分の2以上の同意が必要であった。
そのために30筆に分筆をして、それぞれ違う合同会社にそれぞれ借地権を設定した。
要するに地権者を水増して、3分の2以上の同意を取り付けて、再開発に持ち込んだということです。

今回は、なぜバーコードのような形状になったのか、
この分筆が法律的、倫理的にどうなのか
こういう変な仕事が依頼されるときの特徴についてお話をします。

この動画をみていただければ、特殊な仕事を依頼されたときにどう対応するのか。
処世術が手に入ります。
ぜひ最後までご覧ください。

どーも(^^)
開業20年、土地家屋調査士の杉山です。
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最後に視聴者さんのコメント欄の質問にランダムで答えますので、お付き合いください。

この日本橋バーコード分筆についてなんで知ったかというと、
司法書士のカヨウマリノ先生と土地家屋調査士の池田先生で、YouTubeのコラボをされていました。
そのときの話題にこの日本橋バーコードが出てきた。
その後、土地家屋調査士の池田先生が日本橋バーコードについて素晴らしい解説をされていて、
これは面白いな。ということで私のほうでも取り上げさせてもらいますということです。
土地家屋調査士の池田先生の動画も、リンクを貼っておきますので、そちらもご覧ください。

バーコード分筆の3つの話をいたします。
1つ目は、分筆の形状について
2つ目は、法律的、倫理的にどうなのか
3つ目は、あとで問題になる仕事を依頼されるときには特徴がある

 

それでは、
1つ目は、分筆の形状について
カミソリ状に土地を細く分筆するということは昔からあります。
隣の建物が越境していたり、何らかの事情で土地を細く分筆するということは、今でもあります。
しかし、今回のバーコード分筆というのは、初めて見ました。
83.63㎡の土地を幅が約18cmで、奥行きが約14.6mで、30筆に分筆したということです。
その形状が、まるでバーコードのようだということで日本橋バーコードと言われています。
おそらく公図の場合は、縮尺500分の1だと線で真っ黒になってしまって表現できないと思います。
地積測量図は通常は、250分の1で作成しますが、100分の1で作成されています。
境界標については、地積測量図を見ると分かりづらいのですが、計算点となっています。
現地には境界を設置していないということになります。

これが碁盤の目のように、縦横に交差させて四角形をたくさん作ったらどうかです。
道路に面している土地と道路に面していない土地では価値が違います。
30筆の土地をすべて道路に面する形状にするためには、やはりバーコード状にするほかなかったのでしょう。

 

2つ目は、法律的、倫理的にどうなのか
まずは、法律的なところですが、
不動産登記法の25条に申請の却下事由というのが13項目あります。
13項目のうち一つでも当てはまれば申請は却下ということになります。
今回の分筆では、この13項目には該当しないということになります。
実際にそのように判断されたから分筆登記が実行されたということです。
ただし、法務局としてはこういった地番関係が錯雑とするような分筆というのはやりたくないだろうと思います。
法務局の登記官によっては、「取り下げをするように、土地家屋調査士に打診する」ということが、あったかもしれません。
それはわからないです。

少し余談ですけど、10年くらい前までは企業が交渉人を使うというのがあったんです。
申請がとおりにくい案件だと、コワモテの人を行政に送り込んで、ごり押しで申請を通しちゃおうということがありました。
今は、さすがにそういう話は聞かなくなりました。
企業もそういう人とかかわりがあると逆にやられちゃいます。
行政もマニュアル化されていて、ごり押しされても屈しないんじゃないかと思います。
最近は、ごり押しする交渉の人を見なくなったという話でした。

今回のバーコード分筆については、法律的にはOKということです。

つぎに、倫理的にどうなのかという問題です。
地番が著しく錯雑とする。
あるいは、分筆後に隣の土地から境界確定訴訟をされたときに、細い筆の地番が一つなくなるなんてこともあり得る。
隣の地権者が反対派の人であればそういう可能性もあるということです。
そんなところもありますけど、申請人の意思を尊重したということで、
倫理的にダメとは言えないでしょう。

そして、率直な意見を話します。
こういう仕事は土地家屋調査士としてやりたいかと言えば、やりたくないですね。
これは一見さんであれば、まずお断りします。
取引の深いお客様であれば、やりたくはないけど、
いろんな要素を考慮するということになります。
分筆をする理由は何なのか?
報酬いくら出すのか?
当然、こうした特殊案件については、安くなんてできないです。

業務を行えば、間違いなくトラブルに巻き込まれます。
実際に再開発に反対した人たちが訴訟を起こしていたらしいです。
分筆登記に提出した書類は、利害関係人であれば閲覧できます。
反対派の人達は、当然にチェックします。
土地家屋調査士が登記を申請する場合には、不動産調査報告書を提出するんですけど、
そこには、いつ誰と境界確認を行ったのか、その本人確認の方法などこと細かく書き記します。
日本橋ですから、土地柄、境界確認はかなり慎重にやってると思います。
ただし、ツッコミどころがあればそこは当然につかれることになります。

倫理的にダメとは言えないけど、土地家屋調査士としてはやりたくはない仕事です。

 

3つ目は、あとで問題になる仕事を依頼されるときには特徴がある

これは、日本橋バーコードの話ではありません。
あくまで私の体験上、おおよそ変な仕事の依頼がされるときというのは、共通のパターンがある感じがします。
その共通パターンが事前にわかってれば、心の準備、逃げる準備、身構えらる準備ができるのでパターンが分かってるのは大事です。
今回の日本橋バーコードの件がどれくらい当てはまるかはわかりません。
私が今まで、変な仕事を依頼されるときはどんな感じであったかを紹介します。

まず担当者から電話がかかってきて、質問されます。
例えば「細い土地で分筆する場合の幅はどれくらいの細さまで許されるか?」とか
いろんな質問をされます。
こちらから「イメージができないのでその案件の資料を送ってほしい」と言っても、なんかはぐらかして資料は送ってきません。
送ってきても、案内図とかかんたんな資料だけです。
要するに、こちらの情報だけが抜き取られて、先方の情報はほとんど入ってこないという状況です。
担当者からの連絡は、メールではなく電話できます。
人によっては、当たりさわりのない内容は、メールで連絡、大事な要件は電話でしてくるという人もいます。
要するに、担当者はやり取りの履歴を残さないようにします。
注意したいのは、こちらが話した内容は、話したとおりに社内で伝わってるとは限らないということです。

あるときに、担当者から「打ち合わせをしたいので本社に来てほしい」と言われます。
そして本社に行きます。
打ち合わせ室に通されます。
会社にとって重要な案件のときには、
部長以上の人(大ボス)が一人いて、その下の課長クラス(中ボス)、担当者がいます。
場合によっては他の人も同席してきます。
必ず、1人対3人以上の多数です。
そこで初めて、詳しい資料が渡されて、説明がされるということになります。
そこで業務をすすめる前提でどんどん話が進んで行きます。
非常に、仕事が断りにく雰囲気になります。

まるで、アリんちょがアリ地獄の砂のくぼんだところに、ポトンと落とされるような感じです。
もがいても、もがいても、もがいても出れないという状態です。

私の場合は、ここまで来てしまった場合には、
一旦、持ち帰って後日に、仕事をお断りして担当者にブチ切れられるというパターンと、
あとはそのままアリ地獄にハマってしまったというパターンも経験があります。

おおよそ、こうした問題案件の場合は、業務の途中で退職者が出ます。
担当者、中ボス、大ボスのうち誰かが会社を辞めます。
そして都合の悪いことは、すべて退職した人の責任になっている。

正直、こうしたアリ地獄から抜け出せないで、引きずり込まれることもあります。

今まで、いろんな経験をしてきた中で、こちらの対応としては、
電話のやり取りは、内容の確認の意味でメールを送って履歴を残す。
もちろん録音も行う。
資料の送付や案件の説明はさきにしてもらう。
ヤバそうだなという雰囲気を察知したら、できるだけ早く仕事を断る。
一社に依存するような取引はしない。
私の場合は、一社で売上の20%を超えるような取引は行わないようにしてます。
一社の売上構成比が40%を超えたら、事実上来る仕事は断れないと思います。

断っても事務所の運営に支障のないようにしておいて
ヤバそうな仕事はできるだけ早く察知して、スパッと断るということが大事だとおもます。

以上、参考にしていただければ幸いです。

 

最後に視聴者さんの質問に答えます。

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Q:
14条地図のない字図地区の分筆登記申請で気をつけることはありますか?

A:
境界の認定で注意します。
人証・・・関係者の証言
物証・・・塀とか生け垣とか既存杭など
書証・・・公図、地積測量図、そのほかの図面

総合的に判断します。
特に既存の公図、地積測量図と認定した境界と数値や形状の違いが大きいときには、
分筆を申請しても、申請が却下されることも考えられます。
仮に、分筆登記ができたとしても、筆界特定制度などで、違う筆界線で特定されることもあります。
関係人の話を重視しすぎると、筆界を誤認することも考えられます。
関係人の主張を聴きつつ総合的な判断が必要です。