土地の境界立会で隣の人から言われて困ったこと
土地家屋調査士の仕事の中で、大変なことと言えば土地の境界立会いです。
私達が測量するお隣の土地の所有者さんに接するとき、反応はさまざまです。
面倒くさそうに対応する人。
つっけんどんに断わる人。
高圧的な態度で怒鳴ってくる人。
困ったことを言われることもあります。
モンスタークレーマーもいます。
境界立会いが苦手だと思っている人は多いんじゃないでしょうか。
今回は、境界立会で難しい相手をどのように、攻略していくのかをお話します。
話すのが苦手な人、コミ症な人、境界立会いで苦戦することが多い人。
境界立会いは、実は話が得意な人よりも、話が苦手な人がうまくいきます。
その理由と境界立会いの成功率が劇的に上がる方法をお話します。
ぜひ最後までご覧ください。
どーも(^^)
開業20年、土地家屋調査士の杉山です。
このチャンネルでは、土地家屋調査士としての経験、知識、考え方をお話しています。
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1つ目は、境界立会いの会話の構造を理解する
2つ目は、高圧的な態度で来る人への対処
3つ目は、相手の意見に同意ができない場合
4つ目は、頭の中に絵を浮かばせる
5つ目は、イエスをもらうためのテクニック
1つ目は、境界立会いの会話の構造を理解する
業務における対話であったり、プレゼンテーションというのは、すべて構造というのが決まっています。
話しをする相手が、今いるところA地点から、自ら行動変容、意識変容を起こしてB地点に行ってもらう。
そのために、一生懸命お話をするということになります。
①境界立会いの相手の心の中が今どの状態かを理解する。
これがA地点です。
面倒くさいな
忙しいんだよ
協力しなきゃいけないのかよ
境界なんていわれてもわからないよ
現地まで遠いのに行ってられないよ
②境界立会いの相手の気持ち、行動がどうなってほしいのか
これがB地点です。
境界立会いするよ
境界について納得しました
③なぜ、相手はB地点に行けないのか?
相手が行けない理由、障害を取り除く
・時間がない
⇒10分程度で終わります。
⇒土日でも夜でも、大丈夫です。早朝でも説明に伺うことができます。
お時間いただけないでしょうか。
・遠くに住んでいる
⇒まずは境界の資料を郵送しますのでご覧になっていただけますでしょうか。
公図や地積測量図などの資料、場合によっては現地で境界の説明動画を撮影してDVDを送ることもあります。
・相手がとにかく嫌い、ひどい目にあわされた
⇒まず、どんなひどい目にあったのか傾聴する。話すことで気持ちが楽になると言うこともあります。
⇒今回、測量が終わって売却すれば、もうお会いする機会がなくなるかもしれません。
⇒今回、境界確認ができれば、〇〇様が測量が必要になったときに立会いしなくて良い場合もあります。
・そちらの勝手だろう、協力する必要はない(測量が必要な理由が分からない)
⇒〇〇様も、将来土地を売却したり、相続で分けたりすることはないでしょうか。
土地を売却する際には、測量をして境界を確定するのが一般的です。
境界確定ができていない土地は、価値が低くなることもあります。
・以前、こちらが境界立会いをお願いしたときに協力してもらえなかった。
⇒それは協力したくないというお気持ちはわかります。
今回、境界確認ができれば売却して相隣関係ではなくなります。
〇〇様も境界確定ができるメリットは大きいとおもます。
まず、相手の話しを十分に聞いて、今どの状態なのか、
どんな理由で境界立会いに応じてくれないあるいは境界の合意にいたらないのかを把握する。
聞き取りをするときに、相手がズバッと本音を言う場合もあるし、何も言わないこともある、本心とは違うこともあります。
相手が今どういう状態か、問題は何なのかを把握することが大切です。
2つ目は、高圧的な態度で来る人への対処
境界立会いで、やたら高圧的な態度できたり、
怒鳴る人もいるし、理不尽なことを言ってくる人もいます。
怒鳴る人って、その怒っている内容がめちゃくちゃだったりします。
「測量の挨拶っていうのは、面と向かってするのが普通だろ!それをポストに手紙を放り込みやがって!」と言われることもあります。
だって留守だったら普通は手紙を入れるでしょう・・・。
「境界立会の日程って、そっちで勝手に決めやがって、相談とかねえのかよ。」
ご都合の良い日程をお知らせいただけると幸いです。って書いてあんじゃねえかよ。
そんな怒鳴る内容じゃねえだろう。と思います。
こちらも人間なので腹も立ちますよ。
そんなに大した関係でなければ、すぐに縁を切る。
関係終了ということで良いのですが、隣地との境界確認という場合には、関係終了というわけにも行きません。
間違いなく仕事を完成させるためには、高圧的な態度の人とも合理的に対応をする必要があります。
怒鳴ってくる人に対して、私がよく使うのは、もっと怒らせる。
もっとひどいことを言うようにおびき寄せる。
これは、脳科学者の中野信子さんが言っていたことをそのまま実践しています。
隣接の所有者さんが怒り出したら、怒っている内容を深堀りしていく、そしてもっと、もっと、もっと怒らせる。
怒らせると言っても、失礼なことを言うのではなくて、怒っている内容を掘り下げていって、もっと怒るように誘導していきます。
まわりに人がいたら、「この人、こんなひどいことを言っておかしいんじゃない」と思うくらい相手に言わせる。
本人も、怒っているときには興奮していますけど、時間が経って落ち着いてくると、
「いやあ、ちょっと言い過ぎたな」と罪悪感を覚えます。
そして、相手が落ち着いてきたところ、あるいは後日に、こちらが主張していくと断然、交渉がやりやすくなります。
人って、ずっと長い時間、怒ってられないです。
なので、時間が経って落ち着いてきたところで、こちらの主張をさせてもらう。
これで意外とすんなり、承諾してもらます。
また日を改めて、会うと間に怒っていたときとは、人が変わったようにおとなしくなっていることはよくあります。
怒鳴ってくる人には、もっと怒らせて、ひどいことを言わせるようにおびき寄せる。
今までは、これで100%うまく行ってます。
効果バツグンの交渉方法なので、ぜひお試しください。
あともう一つは、高圧的な態度でくる相手に対しては、
じっと目を見ながら「すみません。すみません。」と謝りながら前に出て距離をつめます。
人にはパーソナルスペース(自分の縄張り)というのがあって、
前に出てパーソナルスペースに入られると驚異を感じます。
「何だこいつ」と思ってこれ以上攻撃してこないこともあります。
逆に、後ろに下がるとドンドン攻撃してきます。
動物が逃げる相手は追いかけて、向かってくる相手に恐怖を感じるのと同じです。
なので、相手の攻撃を抑えたいときは前に出る。
もっと相手に攻撃させたいときには、後ろに下がる。
これも面白いので、試してみてください。
3つ目は、相手の意見に同意ができない場合
境界立会でうまくいかない人がやっていること
それは、相手の言ってきたことに応酬してしまうことです。
境界立会でまとめるためには、相手の話に応酬するのではなく、
受容して傾聴することです。
境界立会の場面では、隣地の人はいろんなことを言ってきます。
「この境界杭は、私の許可なく勝手に入れた杭ですから境界ではありません。」
「隣の人が境界の杭を動かしたんです。」
「うちの面積が減っているのはおかしい。」
隣地の人がそうした意見を言ってきたときに、
反対意見で応酬するのがよくないです。
「土地家屋調査士が、断りなしに勝手に境界入れることはありません」
「図面の数値を見ても、杭が境界で間違いがありません」
確かに正論ですが、こうした応酬では、水掛け論になるだけです。
「なるほどこの境界標を入れるのに、〇〇さんは許可はしてないんですね」
「いつ頃からこの境界標があるんですか?」
まずは受容して、相手の意見をしっかりと聴きます。
そうすることで興奮している相手もだんだんと落ち着いて来ますので、
こちらの意見を通しやすくなります。
また興奮して、怒鳴ってくる、ひどいことを言う人もいます。
そういう場合には、わざと下手に出て、もっとひどいことを言わせる。
相手が罪悪感を覚えるところまでおびき寄せるということもあります。
ちょっと言い過ぎたというところで、こちらの主張を通します。
いずれにしても、相手の意見に応酬するのではなくて、
受容して傾聴するということがよろしいかと思います。
4つ目は、頭の中に絵を浮かばせる
説明というのは左脳なんです。
ずっと説明だけをしていると、左脳、左脳、左脳を使っているわけです。
そうではなくて、相手に動いてもらうためには、左脳だけではなくて右脳を使ってもらう必要があります。
そのためには、ストーリーを語って、相手の頭の中に絵を浮かばせるんです。
「空き家があると何かと心配ですよね。浮浪者が入ることもあるし、火災の心配もあります。
でも今回、売却ができれば、きれいな新しい住宅が立ち並んで、風景も明るくなるんじゃないでしょうか」
「今回、境界の確認ができれば、コンクリート製で長さが60cmある杭を設置します。
穴を掘って地面の中でセメントで固めますから境界杭は少しの衝撃では動きません。
境界の位置がハッキリ見えますから安心ですよ。」
「〇〇さん今回、土地を売却したお金を老人ホームに入居する資金にするんです。3ヶ月後には引っ越しされるようです。」
もちろん個人情報は、どこまで言ってもいいかは確認をしておく必要があります。
絵が浮かぶ話しをたくさん用意しておいて、的確なタイミングで絵が浮かぶように話しをします。
説明だけだと人は動きません。
相手に絵を浮かばせることで、承諾をいただける可能性が高まります。
5つ目は、イエスをもらうための交渉テクニック
境界確認をする上で、テクニカルなことも使っていきます。
しかし、ここで紹介するような技術は、少し勉強をしている人であれば知っていることが多いです。
特に営業職をされている人は、ほとんど知っている技術です。
あまりにテクニックを多用すると、なんか誘導されてるような、いや~な空気になります。
テクニックでなんとかしようと思うとその気持が相手に伝わります。
あくまでも誠実な姿勢で、仕事を成功させたいという願いと一緒に、重要なピンポイントで技術を使うことをお勧めします。
①同調効果
人は、みんなが協力をしているのに、自分だけは違う行動を取るというのは難しいです。
なので、「みなさま」という言葉はよく使います。
「周りのみなさまに境界線の確認をお願いしております。」
あとは、近隣ですでに署名捺印を頂いている立会証明書など書類があれば、
その書類を何気なくチラつかせる。ということもあります。
たまに同調圧力が、まったく関係ない人もいるので、
そういう人には、違う手法を使っていきます。
②AorB
人は二者択一で選択を迫られるとどちらか選んでしまう性質があります。
なのでどちらを選んでも、こちらの目的が達成できるようにAorBを作ります。
「境界立会いをしていただけるなら、土日と平日どちらでしょうか」
「午前と午後でしたら、どちらのほうがよろしいでしょうか」
「境界標を設置するとしたら、金属プレートとコンクリート杭のどっちでしょうか」
AorBをつくって、相手に選択してもらいます。
ただしAorBを連発しちゃうと誘導している嫌な感じになっちゃいます。
なので、肝心なところで1回だけAorBを使います。
③最初に無理目のことをチラッと言うということもあります。
「法務局の地積測量図の数値を見ると塀よりも、さらに〇〇様側の土地に入ったポイントが境界になります。」
「ただし、測量図も古くて、今と測量の精度も違いますし、測量を依頼した〇〇さんも塀の中心が境界だと言っています。」
「塀の中心が境界ということで、確認をいただけますでしょうか。」
若干、無理目の話しをしてから、本来の要求をすると成功率は上がります。
これはドアインザフェイステクニックと言います。
ただし、無理目の話しをあまり、しつこくしたり、強調すると、
めちゃくちゃ相手が怒り出すので、あくまでチラッと無理目のことを言います。
④イエスセット話法
イエスを積み上げていくと、相手との親近感も湧いてくるし、一貫性の法則というのがあって、次のイエスがもらいやすくなります。
小さいイエスを積み上げていって、最終的に大きな承諾をいただく、これがイエスセット話法です。
「隣の土地を測量することになりまして、ご挨拶に伺わせていただきました。」⇒イエス
「今日は寒いですよね」⇒イエス
「土地の境界の調査をするのに、敷地に入らせて頂いてよろしいですか。」⇒イエス
「土地の境界線の確認をお願いしたいのですがよろしいですか」⇒イエス
「今日は休みの日に時間をとっていただきました。ありがとうございます。」⇒イエス
「測量して計算した結果、境界のポイントこちらになります」⇒イエス
小さいイエスを丁寧に積み重ねていく、そして「今日は寒いですね。」と言った事実に対しては、答えはイエスしかないということです。
「今日は休みの日に時間をとっていただきました。ありがとうございます。」といった事実を交えながら、イエスを積み重ねていくとやりやすいということになります。
⑤BYAF
BYAFはバットユーアーフリーの略です。
ですが、あなたの自由ですという意味です。
人は自由がなくなると窮屈な感じがして、反発したくなります。
こんなことを言う人はいないと思いますが、
「法務局の測量図に基づいて復元すると、境界はこちらになります。ではこの位置に境界標を設置いたします。こちらの立会証明書に署名捺印をお願いします。」
こんな言い方をされたら、ちょっと待ってよと反論したくなります。
ここでBYAF、ですがあなたの自由です。というメッセージを入れながら話すとこうなります。
「法務局の測量図に基づいて境界を復元すると、こちらのポイントです。
〇〇様の認識も境界はこちらでよろしいでしょうか。
〇〇様にご確認いただければこの位置に境界標を設置いたします。
こちらの立会証明書の内容を読みますので、よろしければ署名捺印をお願いします。」
すごくまどろっこしいんですけど、
このくらい、境界を確認するのも、境界標を入れるのも、署名捺印をするのも、
あなたに選択権がありますというメッセージをしつこいくらい伝えます。
そうすることで、相手の反発を抑えることができます。
紹介した交渉のテクニック
同調効果、AorB、ドア・イン・ザ・フェイス、バットユーアーフリー、イエスセット
こういったテクニックって使うと面白いんですしそれなりに効果はあります。
でも、これくらいの交渉テクニックは知っている人もたくさんいます。
あまりにテクニックに走りすぎると、相手は誘導されているような嫌な気分になります。
あくまでテクニックは乱用しない。
誠実な姿勢で、相手に向き合うのが大切です。
堂々と自身満々に話してるけど、やたら話が長くて、面白くなくて、何言ってるかよくわかんない、
おじさんって世の中に3000万人くらいいるじゃないですか?
というか、世の中のほとんどのおっさんがそうだと思います。
そういうおっさんって勉強しないんですよ。
私は人とコミュニケーションを取るのが苦手だったので、どうすれば境界立会いがうまくいくかを考えて来ました。
だから私は境界立会いの成功率が抜群に高いです。
今回も、ご覧いただきありがとうございます(^-^)/
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