【非常識な価格設定】土地家屋調査士の値決めについて

どんなビジネスであっても、難しくて、重要で奥が深いのが、値決めです。
みなさんは、どうやって価格の設定をされていますか?

その業務にかかる時間がトータルで何日から1日あたりの金額で計算しよう。
あるいは業界の相場と照らし合わせて考える。
そんなふうに考えてはいないでしょうか。
はっきり言ってそれでは、儲かりません。

今回は、土地家屋調査士の報酬の設定についてお話をします。
価格の設定についてあまり考えたことがない。
どういうふうに値決めをしていいかわからない。
そんな人には役立つ情報です。
ぜひ最後までご覧ください。

1つ目は、値決めには型がある
2つ目は、値決めの型を破る
3つ目は、値決めをするマインドセット

1つ目は、値決めには型がある
値決めの型には3つあります。
ほとんどの商売では、いずれかの型を使って価格を決めています。
言わば、値決めのセオリーです。

①コストから割り出す方法
単純に物を仕入れて販売する商売であれば、
原価に20%から30%を上乗せして販売する。
土地家屋調査士のような労働集約型の仕事については、かかる時間から報酬額を計算する方法です。
かかる時間について1時間あたり報酬で、計算する方法です。
実は、これが一番儲からない方法と言われています。

依頼者さんからすると原価がいくらとか時間がどれくらいかかっているというのは関係がないんです。
その仕事が完成することで得られる価値に対してお金を払います。
依頼者さんからすると境界確定をして売却出来る価値が50万円であるのに、
報酬として30万円しか請求しないということになれば、いい人にはなるけど事務所は儲かりません。
コスト(時間)から計算するという方法が一番おすすめできません。

②相場から割り出す方法
その業務内容と地域によって、おおよそ相場というものがあります。
その相場の上下20%の間で報酬を設定するというやり方です。
例えば建物表題登記の報酬が10万円だとすれば、8万円から12万円の間での報酬額の設定ということになります。
ある意味、思考停止している値決めの方法だと思います。
この方法がもっとも多く使われていると思いますが、これも相場に引っ張られてしまい得策とは言えません。

③価値から割り出す方法
かかるコスト、相場とは関係なくお客様が得られる価値から価格を決める方法です。
価値から価格を設定できるとより成功しやすくなります。

土地の売却に伴う測量であれば、1000万円の売買と10億円の売買であれば、
同じ確定測量であっても、当然お客様の得られる価値が違います。
永年に渡る境界争いを解決できるという場合もお客様の得られる価値は大きいと言えるでしょう。
急ぎの仕事に対応する。土日でも対応するということも価値の提供です。

また人的価値ということもあります。この人に仕事を頼みたい自分のファンになってもらう。
自分をブランディングするということが大切です。
ブランディングするには、自分の理念を語る。ありのままのストーリーを語ることで共感する人がついてきます。
ワンピースで言えば主人公のルフィーが「海賊王に俺はなる」という理念に共感して仲間が集ってくるわけです。
私で言えば「安心して不動産取引ができる社会をつくる」あるいは「好きな人と好きな仕事で生きていく」という理念を語ることで共感する仲間が出来ます。
あとはありのままのストーリーを語るということです。
格好いいストーリーも良いですが、格好悪いストーリーをありのままに語ったほうがファンは付きやすいと思います。
「東大卒で、土地家屋調査士試験に一発で1位合格、開業から順調で今は50人の事務所を運営しています。」
というストーリーはすごいと思いますけど、ファンはできにくいのかと思います。

私のストーリーは、
「コミ障で、勤めていたときにはひどいイジメに合いました。土地家屋調査士試験には5度目でやっと合格、でも今は好きな人に囲まれて楽しく仕事をしています。」
格好悪くても、ありのままのストーリーを語ることで、応援してくれる人はどんどん増えていきます。

特に、私みたいにどん底から、這い上がるストーリーは結構おいしんです。

価格設定の方法のセオリーとしては
コスト(時間)から考える。
相場から考える。
価値から考える。
ということになります。
ほとんどの事務所はこのセオリーどおりに値決めをしてると思います。

2つ目は、値決めの型を破る
タイトルに非常識な価格設定と入れているので、セオリー以外の自分なりの意見というのも紹介します。
型を知った上で型を破っていくという方法です。

①先に事務所の規模を決めてしまう
事務所の運営を1人でやるのか、2人でやるのか、あるいは5人でやるのかを決めてしまう。
ちなみに私は、身内だけで2人で運営をしています。
事務所の規模が決まれば、おおよそ業務を処理できる仕事量が決まってきます。
その処理ができる丁度よい仕事量になるように金額で調整する考え方です。

例えば、ラーメン屋さんで1杯800円を売っている。
人気のラーメン屋さんで大行列が出来ている。
行列ができるので近隣からは苦情が来ている状態です。
忙しくて従業員はクタクタ、でも時給も安い。
なおかつ忙しい割には、そんなに儲かってない。
そういう状況というのは有り勝ちだと思います。
これを800円から900円に値上げをしたらどうか、
まだ行列ができるのであれば1000円にする。
そして1100円にする。
どこかのタイミングで、丁度いいお客さんの数になると思います。
そして丁度いい客数になった金額が適正価格です。
そしてお店は、行列の苦情がなくなって、従業員もそれなりの時給をもらえて、お店も儲かる。
ハッピー、ハッピー、ハッピーではないでしょうか。

私は開業当初は、建物を新築したときの表題登記を7万円でやってました。
すぐに8万円、9万円、10万円と価格を上げていきました。
今は、さらに価格をあげさせて頂いてます。

今一度、事務所の規模に合わせて価格を見直してみてはどうでしょうか。

②目標額から値段を決める
事務所の目標額を決めて、目標を達成できるように報酬を設定するということです。
私の場合は、2人で月に200万円、年間で2400万円を目標額にしています。

単純に100㎡の宅地を確定測量をするのに、月に何本こなせるかです。
単純に月に5本測量するのであれば、200万円÷5=40万円の報酬といことになります。
月に4本しか測量できないのであれば、200万円÷4=50万円の報酬です。
この報酬額より低い金額で仕事を受けると目標を達成できないので、
必ず設定したより高い報酬額で仕事を受けるようにします。
そうしないと目標額は達成することは出来ません。

③繁忙期と閑散期では値段を変える
レストランも、ホテルも、飛行機も、
その曜日や時間帯、シーズンによって金額を変えています。

土地家屋調査士の報酬も、非常に込み合っている時期と業務が空いているときでは金額を変えてもいいと思っています。
それほど大幅に変える必要はないと思いますが、
仕事が混み合っている時期にあえて相見積もりで勝つ必要はないということです。

仕事が少なくてほしい時期もあるし、仕事が多すぎてこれ以上は処理できないというときもあります。
それをあえて同じ金額でやる必要はありません。

 

3つ目は、値決めをするマインドセット

値決めをする上で、最も重要なのはマインドです。
自分に自信がない人
優しい人
お金に対してネガティブな感情を持っている人
こういうマインドを持っている人は考えを変えなければ、成功する値決めはできません。

①自分に自信がない人はダメです
値決めをするのは、やはり怖いんです。
せっかく着いてきたお客さんが、この1件の見積書で離れちゃうんじゃないか。
あとは、相見積もりで何回か負けが続くと、ちょっと高いんじゃないかと不安になります。
そこは自身を持って自分の金額で、見積書をズドンと出す。

自分に自信がないとドンドン見積り金額が安くなっていきます。
お客さんが、安い業者を見つけて離れていくっというのは、避けられないことです。
相見積書も当然、負けることもあります。
安い業者なんていくらでもありますから、そこで競っても仕方がありません。
こちらが提出した見積書を「この金額より安くやってほしい。」と他の業者への交渉材料に使われることもあります。

自身を持って自分の金額でズドンと出す。
これが良いと思います。

②優しい人もダメです
お客さんはいろんなことを言ってきます。
「今回だけ、もう少し安くしてほしいんです。」
「今回は、予算が少ないのでなんとかお願いします。」
いくらでやってほしいと指値で来るパターンもあります。
以前の私もそうだったのですが、優しいとお客さんの要求を受けてしまうんです。

そこは出来ないことは出来ないと言うことしかないです。
「今回だけお願いします。」という人はおおよそ今回だけではないです。
「次も出すからお願い」という人は、だいたい次はないです。

出来ないことは、出来ないときっぱり言うことも大切です。

③お金に対するネガティブな感情を持っている人はダメ
お金を稼ぐことに罪悪感がある。
お金をたくさん稼いでいる人、きっと悪いことをしている。
お金に対する考えというのは、親の感覚をそのまま引きずっていることが多いと言われています。

もし、お金に対してネガティブな感情を持っているようであれば、
その考えを改めないとビジネスではうまくいきません。

ビジネスをしていると、応援してくれる人が必ず現れます。
大口のお客さんを紹介してくれたり、儲かる仕事を紹介してくれたりします。
ちょっとしたことでサービス業務でいいことでも、「請求書を出してくれ」と言われます。
遠慮をしないで請求する。
予想外にかんたんに仕事が終わってしまい見積もりした金額では、いただきすぎと感じることもあります。
予想外に大変で赤字になる仕事もあるわけですから、遠慮しないで請求する。

お金にネガティブな感情を持っていると、つい遠慮をしてしまいます。
私も開業当初は、相手の好意を遠慮して、跳ね返したこともありました。

でも今は、遠慮しないで頂いております。

 

なぜ仕事の報酬を高くしなければ行けないのでしょうか?

まずは、ビジネスとして利益を出さないといけないということがあります。
これは経営学者のマイケル・ポーターの言葉です。
いかにライバル業者よりも高い金額をチャージするかが大事だと言っています。

つぎに、安くすると返って売れないということがあります。
たまたま入ったラーメン屋さんのメニュー見たら、らーめん500円でした。
人によって違うかもしれませんが、私は失敗したなと思います。
500円という値段から、
「きっと美味しくないんだろうな」
「食材も安いの使ってるんだろう」
「衛生的に大丈夫かな」
私なら、食べる前からそんな想像をしてしまいます。
安くてラッキーとは決して思いません。
つまり、安くすると返って売れなくなるということが起こります。
逆に一杯1300円のラーメンであれば、
食べる前から、きっと美味しいんだろうな、食材にもこだわっていているんだろう。
つまり、安くすれば必ず売れるわけでもなく、高いほうが売れることもあります。

そして、価格を変えると客層が変わるということが起こります。
実はこれが、私が価格にこだわる一番の理由です。

安いお店には、残念ながら安いお客さんが集まります。
たまに、しつこくクレームを言って店員を怒鳴りつけてる光景というのを見かけますよね。
おおよそ客単価の低い店ではないでしょうか。
高級レストランや高級ホテルで、店員にクレームを言ってる人って、ほとんど見ないですよね。

妻の友人がコンビニエンスストアで働いているんですけど、
あるときに50歳くらいの男性が、すごい血相でコンビニに入ってきたんです。
「これ猫のエサじゃねえか。もう少しで食べるところじゃねえか、どうしてくれるんだ。」と言うわけです。
どうやら自分で食べようと思って缶詰を買った。
それが家に返ってみたらキャットフードだったと言う事で怒っているらしい。
その男性もなかなか怒りが収まらず、店員さんも謝罪してなんとかお引取り願ったんです。
でも普通は間違いないですよね。
ペットフードのコーナーに缶詰が置いてあるし、缶詰に猫の絵が書いてあって間違いようがないと思うんですよ。
仮に間違えたとしても、そんなの恥ずかしくて店員さんに言えないですよね。

でも、これはコンビニのエピソードですけど、高品質スーパーの成城石井でも同じことは起こるでしょうか。
成城石井でもクレームはあると思いますけど、コンビニよりは頻度は低いしクレームの質も違うのではないでしょうか。

 

私も開業当初は、お客様の層が悪くて苦労をしました。
見積もりを出してOKをもらっているのに、最後の支払いの時まで値引きの要求をしてくる。
明日、境界標を設置してほしいなど無理なスケジュールを要求される。
勝手に請求金額から差し引いて振り込んで来る人もいました。
「振り込まれた金額が違いますけど、どういうことですか?」と質問をすると
「これは〇〇共済費で、弊社と取引をしたときには皆様より協力してもらってます。」という訳のわからない答えが返ってくる。
そんな理不尽なことが、開業当初には頻繁にあった。

これも開業当初は相場よりも安い金額で業務を行っていたために、相応の客層であったと今は思います。
しかし、値上げを繰り返して相場よりは高い報酬を頂いている現在では、依頼者とのトラブルはほとんどありません。

請求書を提出して一ヶ月以上、支払いまでに時間がかかるお客様はいません。
値引きを要求されることも、ほとんどありません。
納期など余裕を持ったスケジュールを組んでもらえることが多い。

報酬額を上げていくと客層が変わるんです。
これが私が報酬額にこだわる一番の理由です。

私の親戚でカバンをつくる職人の人がいました。
子供のころ遊びに行くと、日曜日でも、お盆でも、お正月でも、
いつ行ってもミシンでカバンを縫い合わせる作業をしていました。
本当に毎日、毎日、毎日忙しく働いていました。
本当によく働くなと子供なりにに関心をしていました。
でも老後は大変だったようです。
お金がなくて生活がかなりきびしいようでした。
カバンをつくる仕事でいくら、もらっていたかは知りません。
でも報酬は安いとダメだと思います。

私は時間は命だと思っています。
人生100年とすれば1年は100分の1の命なんです。
1日は、36500分の1の命なんです。
働ける期間が50年と考えれば、1日の価値はもっと高いと思います。
いずれにしても、報酬を安くするというのは、自分の命の安売りとも言えます。

最後に、質問をさせていただきます。
みなさんは自分の命をいくらで売りますか?

今回も、ご覧いただきありがとうございます(^-^)/
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