【判例】森林法共有林事件~共有物分割
今回は、昭和62年判決の森林共有林事件の紹介をします。
憲法の財産権について争われた有名な判例です。
しかし、民法の裁判による共有物分割についても勉強になります。
楽しみながら学べますので、ぜひ最後までご覧ください。
それでは、昭和62年4月22日判決、森林法共有林事件の内容をお話します。
静岡県に住む兄弟の話です。
お父さんが息子2人に、4つの山林を生前に譲り渡します。
その贈与の仕方が、山林A、B、C、Dがあって、それぞれ山林Aをお兄ちゃん半分、弟が半分、山林BCDもお兄ちゃん、弟が各2分の1にしました。
そして、山林A、B、C、Dをお兄ちゃん2分の1、弟2分の1の共有で登記をしました。
そしたら、どうなったでしょうか?
お兄ちゃんが、ギーっと木を切りはじちゃった。
それで、その切った木を売りと飛ばしっちゃった。
売却した利益が最終的に、1430万円あったというのだから、かなりの本数を切ったということでしょう。
弟はびっくりしますよね。
弟「おい、兄ちゃん何をやってんだよ。」
兄「俺が2分の1持ってんだから、いいじゃねえかよ。」
弟「勝手なことしないでくれよ。」
「じゃあ兄ちゃん、山林ABCDを半分に分筆して、それぞれ1人で持つようにしよう」
と提案した。
そしたらお兄ちゃん
「うーん、嫌だ。」って拒否したそうです。
弟さんは怒って、
「裁判だ!裁判所に分割の請求をする。」
という事になりました。
そこで、立ちはだかったのが、当時の森林法という法律だったんです。
当時の森林法186条で、持分価格で過半数を超えない共有者の分割請求を否定する規定がありました。
つまり、弟さんは持分2分の1で、過半数である51%以上を所有していないので、分割請求が出来ないという話になったんです。
それに対して弟は、
「違憲だ。憲法29条の財産権の侵害だ。」と国を相手に裁判をすることになります。
ここで、憲法第29条
第1項 財産権は、これを侵してはならない。
第2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
判決では
「持分価額2分の1以下の共有者の分割を許さないことに、強い社会的な必要性はない」として、森林法第186条の規定を日本国憲法第29条に違反する違憲判決が出しました。
はい、弟さん違憲判決を勝ち取りました。
そして、判決では民法258条の裁判による共有物分割について触れています。
まず、持分を超えて取得する共有者が、超過分のお金を支払って調整することも許される。
どうしても、ピッタリ持分の通りに分割できないこともあります。
例えば、それぞれAの持分2分の1で、Bの持分2分の1で、50%づつで分割をするところ、Aが55%とBが45%になってしまった。
その差の5%に相当するお金を共有者AがBに支払って、平等にする。
ピッタリ持分の通りに分割できない場合にお金で解決する方法です。
つぎに、数か所に分かれているいくつかの共有不動産について、すべてを分割の対象として、分割後のそれぞれを単独所有とすることも許される。
一つの不動産にとらわれずに、全体で考えます。
例えば、共有不動産が甲土地、乙土地、丙土地と3つあって、ABCの3人が共有している。
甲土地をAの単独所有、乙土地はBの単独所有、丙土地はCの単独所有。
3つ全部を一括して考えて、一つ一つの不動産を単独の所有にするという考え方です。
そして、何人かで共有する物を分割する場合には、分割請求者の持分の分割をして、その他は共有として残す方法によることも許される。
分割請求した人の分だけを分割します。
例えば、土地を5人で共有している場合に、そのうちの1人の分だけを分筆して単独所有にする。
残りの4人については、共有のままにするという考え方です。
裁判による共有物分割の考え方として、
持分との差はお金で調整して考える。
一つの不動産だけでなく、他の共有財産も一緒に考える。
分割請求する人の分だけの分割にして残りは共有のままで考える。
土地家屋調査士として仕事をしていると共有不動産というのはトラブルが多いなと感じます。
固定資産税は誰が払うのか、維持管理でかかるお金のこと。
売却したくても、共有者同士で話がまとまらない。
次第に、共有者同士の関係が悪くなることもあります。
相続や贈与のときに、安易に共有持分で登記をするのではなくて、
それぞれ単独所有にするように協議をすることをおすすめします。
もし、現在共有になっている不動産がある場合には、
全体を売却するか、一方の共有者が買い取るか、
共有物分割の登記、分筆登記をして単独名義にするか。
早めに共有関係の解消をすることをおすすめします。
今回も、ご覧いただきありがとうございます(^-^)/
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