土地家屋調査士って、他人の戸籍・住民票を職務上権限で請求できるの?

土地家屋調査士って、戸籍や住民票を調べられるんでしょ。
じゃこの人の戸籍調べてほしいんだけど
みたいなことを言われることもあるんですけど
そんな簡単ではありません。

 

今回は、他人が戸籍や住民票を取得できるのか
取得した場合には、どのようなことがあるのかをお話します。

戸籍、住民票取得する3つのポイントです。

・戸籍、住民票を請求できる人
・他人に戸籍、住民票を請求された場合の本人への通知制度
・戸籍、住民票の不正請求の事例

1つ目は、戸籍、住民票を請求できる人
まずは戸籍です。
戸籍がほしい場合、請求できるのは誰かと言うと
(1)「本人」と「本人の配偶者」
(2)本人から見て直系尊属(父母、祖父母など)・直径卑属(子、孫など)
(3)現在戸籍に、必要な戸籍の方と同じ戸籍に記載されている人です。
その他の人が請求する場合には、委任状が必要になります。

住民票の請求では、
本人の住民票を請求できるのは「本人」または「本人と同一世帯の人」です。
それ以外の方は、委任状が必要になります。

その他請求できるのは
公用請求です。
国又は地方公共団体の機関による請求

第三者請求です。
正当な理由がある場合です。
国又は地方公共団体に提出するのに必要な場合、例えば被相続人の兄弟姉妹が相続証明書として提出する場合

つぎの8士業が職務上、必要となる請求
8士業は、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士
土地家屋調査士が、測量する隣地の所有者と境界を確認するために、隣地所有者の住所地の調査をする場合は、職務上請求をすることができるということになります。

単なる身元調査したいという場合には、職務上必要な請求とは言えません。
士業が、不正に住民票、戸籍、除籍を請求した場合には、もちろん懲戒処分の対象になります。

2つ目は、他人に戸籍、住民票を請求された場合の本人への通知制度
本人通知制度は、市町村が、住民票の写しや戸籍謄本などを第三者に交付した場合に、
希望する本人(事前に市町村への登録が必要)に交付したことをお知らせする制度です。

通知制度に登録できる人
その市町村に住民登録や本籍のある方(過去にあった方も含みます。)

ちなみに私は、本籍地であるさいたま市と住所地である川口市に、本人通知制度の登録をしています。
他人が私の住民票、戸籍、除籍を請求すると私に通知が来るようになっています。
3年前に登録していますが、その後私の住民票、戸籍、除籍を請求した人は誰もいないようです。

登録した人に通知する内容は、交付年月日、交付請求者、交付証明書の種別、交付枚数を郵送で通知または役所で通知書を受け取るということになります。

実は私も、職務上請求に関して弁護士から問い合わせを受けたことがあります。
建物滅失登記を相続人から申請をするという依頼でした。
相続証明書として戸籍を法務局に提出をしますので、職務上請求で戸籍謄本を市役所に請求をしました。
その戸籍に記載されていた一人が市役所から第三者請求の本人通知を受けて弁護士さんに相談したようです。
そして私のほうに弁護士から問い合わせがありました。
私は不正なことは何もないので、普通に事情を説明しただけです。
職務上請求の取り扱いと記載も気をつけないといけないと思いました。
職務上請求書に、事件の種類とか依頼者の氏名とか請求する理由を書く欄があるんですけど
これ適当に書いちゃうと何かあったときに、ツッコまれどころになっちゃいますので注意が必要です。
特に補助者さんに記載してもらうときには、必ず記載内容をチェックしてから市役所に請求するのが良いと思います。

実は、すべての自治体が、本人通知制度を導入しているわけではありません。

2020年4月1日現在、全国の699の市区町村で、本人通知制度を導入しています。
一覧表をリンク貼っておきますので、ご確認をいただければと思います。

 

3つ目は、戸籍、住民票の不正請求の事例

平成23(2011)年11月、東京の法務事務所経営者や司法書士、探偵会社代表等が偽造有印私文書行使、戸籍法違反で愛知県警に逮捕されました。

この事件では、職務上請求書を偽造、悪用し、県警幹部や市民の住民票、戸籍謄本などを3年間の間に全国の自治体から 15,000 件以上不正に入手し、
その情報をもとに身元調査が行われていたことが判明しました。

この情報は、暴力団関係者に渡り警察官が脅迫されるなど、脅迫やストーカー行為、婚約破棄、企業の不採用という被害が実際に発生しています。

グラフィックデザイナーなどと共謀し司法書士会の職務上請求書を2万枚偽造、それを使用して不正請求を繰り返していましたということです。

そして、この事務所は、依頼者から一件当り1万円以上の手数料を取り、
法務事務所経営者はこれまでに 1 億 5700 万円、探偵会社代表も 8700 万円という巨額の不正な利益を上げていました。

法務事務所経営者は、懲役3年実刑。 探偵会社代表、懲役2年6ヵ月実刑を受けています。

以上、戸籍、住民票取得する3つのポイントについてお話をしました。

1つ目は、戸籍、住民票を請求できる人
戸籍は本人、直系尊属、卑属
住民票は本人および同一世帯の人
公用請求と
8士業の職務上請求があります。

2つ目は、他人に戸籍、住民票を請求された場合の本人への通知制度
すべての自治体ではありませんが、本人事前通知制度の登録をすることができます。

3つ目は、戸籍、住民票の不正請求の事例
2011年に、司法書士と探偵業者が、職務上請求用紙を偽造して大量に、戸籍住民票を取得する事件がありました。

以上、参考にしていただければ幸いです。