【農地の地目変更】市街化区域で地目変更登記するための農地法の知識

今回は、市街化区域内の農地の地目変更についての話です。

前に、農地の地目変更について、話したんですけど、市街化区域の場合と市街化区域以外の話を一緒にしたので、話がごちゃごちゃして分かりずらかったと思います。

今回は、市街化区域に限定してスッキリと話していきます。

まずは、市街化区域についての説明をします。

日本国土に、都市計画区域が定められて、その都市計画区域内に、市街化区域、市街化調整区域が定められてます。
市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域です。

どちらにも定められていない地域については非線引き区域と言われています。

この市街化区域内の農地については、農地を農地以外の地目に転用する場合は、許可ではなく届出で足りるとされています。

ではそもそも、農地法の許可とは何かというと
農地法の許可というのは、3条、4条、5条の三種類の許可があります。

まず3条は、農地を農地のまま所有権の移転、賃借権などの設定です。
これは農地を農地以外に転用するわけではないので、市街化区域でも農地法3条の許可が必要です。
農地法3条については届け出という制度は有りません。

次に4条です。
これは、農地を農地以外の用途に転用する許可です。
この場合は、市街化区域の場合は許可ではなく届け出で足りるとされています。

そして5条です。
これは、農地を農地以外の用途に転用して、
なおかつ所有権の移転、賃借権などの設定をする場合の許可です。
この場合も、市街化区域の場合は許可ではなく届け出で足りるとされています。

農地法の許可については、厳しい許可の条件に合わなければ許可を受けることも出来ません。
また、許可申請の添付書面も多くて厳格に審査されます。
審査の期間も2カ月から3カ月程度は、かかります。

それに対して、市街化区域の許可ではなく届出は、添付書面も少なくて審査も1週間から2週間と短くてすみます。

いくつかの注意事項だけ押さえておけば、届出は問題なく受理されます。

では、市街化区域内で、田や畑の農地の地目変更の依頼があった場合の注意事項です。

まずは、過去に農地法の許可、届け出がされているか確認をしておきます。
市区町村の農業委員会で確認をすることが出来ます。
土地の登記情報でも、ある程度はわかります。
登記情報の「甲区」を見て、相続以外の原因で所有権移転登記がされていれば、
その時期に農地法の手続きがされていることになります。

市区町村によっては、届出受理済み証明書を交付してもらえることもあります。
市街化区域内で4条、5条の届け出がすでにされていると農業委員会が証明してくれる書類です。

農地の賃借人(小作人)がいるかどうかです。
農地の賃貸借契約がされている場合は、賃貸借契約を解除の手続きをする必要があります。
農業委員会に問い合わせをすれば、農地の賃借人(小作人)がいるかわかりますので、最初の調査の段階で確認をしておく必要があります。

生産緑地の指定は受けているか
生産緑地の指定を受けている土地で地目変更を依頼されることは、ないと思います。
また現地には生産緑地の看板が建ててありますので、生産緑地であることはわかります。
市街化区域の農地で500㎡以上の農地である場合は、生産緑地の指定を受けている可能性があるとういことは、頭に入れておいたほうが良いと思います。
生産緑地の指定を受けている場合は解除が必要です。
生産緑地の場合は、本人が死亡しているか、農業ができない状態、30年の期間が満了していない限り原則解除はできません。

また、農業委員会の証明書を添付して地目変更を申請する方法もありますので紹介します。

農地転用事実確認証明書
4条、5条の許可がされた目的とおりに、転用がされていることを農業委員会が証明する書類

届出受理済み証明書
市街化区域内で4条、5条の届け出がすでにされていると農業委員会が証明してくれる書類

非農地証明書
登記の地目は田畑の農地ですが、農地ではありませんと農業委員会が証明する書類

市区町村によって、証明できる場合できない場合があるので、管轄の行政に確認が必要です。

ここで、問題になるのは、登記の地目が「畑」で現地が駐車場など違う目的で使用されている。
その土地を地主AさんがB宅地分譲業者に売却する場合にどう手続きをするかです。

2つのパターンでどう違うのかを説明します。

パターン1です。
地主Aさんが駐車場にする目的で農地法4条の届出をします。
その後に登記の地目を畑→雑種地に変更します。
ここで農地法からは離れます。
そして地主Aさん→B宅地分譲業者に所有権を移転する。
そして、宅地造成工事が進んだ状況で雑種地→宅地に地目変更をします。
これが1パターンです。

次に、パターン2です。
地主A→B宅地分譲業者に移転と宅地分譲を目的に所有権移転を目的に農地法5条の届け出をします。
そして地主Aさん→B宅地分譲業者に所有権を移転する。
そして、宅地造成工事が進んだ状況で畑→宅地に地目変更をします。
これが2パターンです。

このパターン1も2も、
最終的に、所有権が地主Aさん→B宅地分譲業者に移転する。
地目が宅地に変更されるという結果は同じです。

地域によって違いがあるかもしれませんが、
土地の面積が500㎡または1000㎡を超える開発行為の場合は、
4条の場合は都市計画法の開発許可が不要なのに対して、
5条届け出をする場合には、開発の許可証の添付を求められます。

この開発許可証の添付が、手続きではネックになります。
なので、面積が開発許可の要件を超える場合は、
先に4条の届出をして地目変更をしておくことで、開発の許可証の添付を逃れることができます。

今回のケースで言うとパターン1だと開発許可証の添付が不要なのに対して、
パターン2だと農地法5条の届け出をする際に開発許可証の添付が必要になります。

パターン1でネックになるのは、現実に利用状況が変わっていないと地目変更は出来ないということです。
地目変更登記をするには、現地の写真の提出が必要です。
また地目変更登記を申請すると法務局が現地を確認します。
なので現実に地目が変わっていないと、地目変更はできません。

結局パターン1の場合は、地目変更登記をしなければ、4条届け出なので
B宅地分譲業者に所有権移転はできません。

ここで振り返ります。

農地法の許可というのは、3条、4条、5条の三種類の許可があります。
3条は、農地を農地のまま所有権移転等をする。
4条は、農地を農地以外に転用する
5条は、農地の転用と所有権移転等をする3条、4条のミックスです。

農地の地目変更の依頼を受けた場合の調査事項は
過去に農地法の手続きをしているかどうか
農地の賃貸借契約があるか
500㎡以上の場合は生産緑地の指定を受けているか

都市計画法の開発許可ですが、
4条の場合は開発許可証が添付不要の場合もありますが、5条の場合は開発許可証の添付が必要になることがあります。
詳しくは地域の農業委員会に確認が必要です。

以上、市街化区域の農地の地目変更についてお話をしてきました。

参考にしていただければ幸いです。