【土地の測量】をしたのにお金を払ってくれない。報酬の未収金をなくすために土地家屋調査士がしていること
私の事務所も2001年に開業しているんですけど、
もともと技術職で、営業のことであったり、お金のことも全くわからずに独立したので、最初は失敗の連続でした。
開業当初は、何回も催促してやっと支払いをしてもらったり、文句をつけられて約束した金額を支払ってもらえなかったり、
まったく払ってもらえず裁判をするということが有りました。
開業当初は、恐ろしいことに業務委託契約書をかわさずに100万円以上の業務を行っていました。
今では、有りえませんが開業当時は、本当に世間知らずで、常識はずれのことを平気でやってました。
でも、この8年間は実は未収金がゼロで、回収に対するトラブルはまったくないんです。
じゃあ、その時と今何が違うのか、どうやって未収金をゼロにしたのかという話をします。
もちろん、未収金がゼロになったのは世の中が良くなって支払いを滞らせる悪い人が少なくなったこともあります。
また、ここ数年景気が良いということもあります。
でも、支払いのトラブルになるたびにルールの改善を繰り返ししてきた歴史があります。
3つの事例を紹介しながら、どのようなことに気を付けながら業務を行ってきたかを話します。
1つ目は、怪しい不動産業者からの依頼でした。
その不動産業者は、数年前に私と名刺交換をしたと言っていたが、こちらはまったく記憶がなかった。
その不動産会社に行ってみると、賃貸の事務所で、仕事をしている活気は感じられなかった。
一応、ホームページはあった。
リーマンショックで、仕事が少なかったこともあって、怪しいとは思ったものの測量の依頼を受けることにしました。
業務委託契約書を交わし、必要書類の授受を行い測量の業務も滞りなく終わらせることができた。
請求をしても、一向に支払われない。
催促すると、「少し待ってほしい。どこどこのお金が入ったら」と始まってしまう。
すかさず、裁判所に支払い督促の手続きをする。これは慣れたものです。
この手続きをして、裁判所から手紙が行くと堪忍して支払う人が多い。
30万円以下の債権なら、この支払い督促の手続きが便利です。
ただ異議を述べられたりすると、訴訟の手続きになるので厄介です。
このときは、相手方が「支払いします」という回答を裁判所に対してしていました。
この回答でも、次の手続きは訴訟になります。
金額が少額のため弁護士にも頼めず、自分で調べて、書類を作成して訴訟の手続きをしました。
訴訟の手続きは、すごく簡単でした。
こんなんで良いのって、拍子抜けをしました。
出廷の日に相手は、出廷せず、判決が確定しました。
ここまで来て、私の無知を露呈することになってしまう。
判決が確定しても、相手の預金口座や所有不動産などが分からなければ、差押えのしようがないんですよね。
この事例の教訓としては、相手の取引銀行など資産状況をトラブルになる前に探りを入れておくということです。
相手方に毎日電話をしましたが、電話に出ることは有りませんでした。
会社の代表取締役の住所は、駐車場になっていて、それ以上は調べられませんでした。
完全にやられたとう言う感じです。
2つ目は、お弁当の会社
知人の若い工務店の創業者、元不良で勢いのあるタイプ。
そんな知人の紹介で、お弁当家さんの自社所有地を売却することになり、測量の業務を依頼された。
苦労した仕事であったが、無事に完了させて、請求書を添えて納品した。
その会社は、月に一回支払いの日があって、そこに業者が並んで、集金する。
集金する業者が、事務所から階段を通り、会社の出入り口付近まで並ぶ。
今どき、こんな会社があるのかと驚いたが、私もその列の最後尾に並んだ。
私の順番になるとなんと、私の支払いが用意されていないというのだ。
事務の担当者に問いただすが拉致が開かない。
翌日から、会社に毎日のように電話をしたが、社長には取り次いでもらえない。
しつこく何度も電話をしていると、「次回の集金日に必ず払います。」という回答であった。
翌月も、支払いがなく、弁護士に依頼して内容証明郵便を送付するが、無視をされる。
私も、この時点でものすごく忙しくてこの件に関わってはいられなくなってしまったので、請求については諦めることにしました。
このお弁当の会社なんですけど、いろんなところに不払いを繰り返していて、すごく評判が悪かったんです。
このお弁当屋さんは、間もなく倒産しました。
その会社の社長、専務といった経営陣がチンピラのような風貌、従業員に活気がない、社内が汚れている清掃されていない。
など今から思えば、危険なサインが沢山出ていたと思います。
ここでの教訓は、初めて取引する会社は、インターネットまた近隣の人の情報をリサーチする。
また経営陣の人物像、社内の雰囲気をよく観察する。
紹介者がいると断りづらいというのがありますが、なにか異常さを感じたら、報酬の半分くらいは着手金としていただくとか、業務をお断りするということがいい思います。
3つ目は、税理士から紹介された地主
この事件が開業からもっともひどい事案です。
何度も取引をしている司法書士さんから税理士を紹介されました。
そしてその税理士から都内の駅近くの2000㎡ほどの土地を所有し、マンションを5棟ほど経営している地主さんを紹介される。
税理士から提供された資料は、20年くらい前のブック式の建物登記簿謄本が一通だけ。
これでマンションの建物区分登記と分筆の登記を依頼された。
一般の方ならまだ分かるんですけど、士業や不動産関連の仕事をしている人で
仕事を依頼や相談をしてくるのに、20年前の登記簿謄本1通とか、あまりにお粗末な資料を提示してくる人は、この人、大丈夫かなと疑ったほうが良いと思います。
このときは、開業当初でそういうこともわからなかったので、
弊所で必要な資料を調査して、見積書を作成した。
すぐには返事が来なかったが、業務を行うことになった。
そのマンションは、空室が多く、手入れもされていない。建築確認も受けていない。
登記記録を見ると聞いたことのない会社の抵当権がたくさんついている。
この時点で、怪しさ満載である。
今なら危険な空気を察知しているところだが、開業したてで経験も浅くそこまで考える余裕はなかった。
隣地で1件、昔からの遺恨があり、境界確認が難航したが無事に業務を完了することができた。
紹介した税理士に報告し、成果品を納品して請求をしようとしたが、
なんとその税理士が「あなたが確定した境界線を依頼人は承知していない。依頼人の意思に反して境界を決めたので請求をさせない」と言い出した。
もちろん依頼人も同席して境界確認をしているし依頼人に十分説明をして、同意しているのは間違いない。
これは大変なことになったと思いました。
こちらはすぐに弁護士に依頼をして「費用の支払いの訴訟」を提起することにした。
訴訟になると、なんとこの地主と税理士は結託して事実無根の内容を陳述したのです。
「そもそも測量など依頼していない」
「境界立会の際に杉山調査士に境界は違うと主張した。にもかかわらず杉山調査士は依頼人の話を無視して境界を決めた」
もちろん、全く事実とは違うことだ。
こうした言った言わないに持ち込んだり、
証明できない事実の争いに持ち込むのを「寝技に持ち込む」というらしい。
こうして裁判は、長期戦に持ち込まれることになる。
私も日常の業務に追われて、裁判に時間をかけることはできなくなっていた。
相手方はいくらでも時間があるので、「たっぷり時間をつかって寝技を仕掛けてくる」という展開になってしまった。
こういう展開に慣れているようにも感じた。
仕方なく、報酬の請求を大幅に減額して和解することにしました。
結果的には、弁護士の報酬を支払って30万円くらいしかお金が残らなかった(^_^;)
ということになりました。
この地主さんは数年後に経済破綻したらしい。
この事例で学んだことは、
裁判では、正義が勝つのではなく時間をかけられる人が勝つのである。
そして、とにかく記録がものを言う。
業務委託契約書は必ず取り交す。
業務委託契約を取り交すまでは、業務を開始しない。
打ち合わせや境界立会などは録音するかメモなど記録は残し置く
最後にまとめます。
初めての依頼者は、報酬がいくらでもすべて業務委託契約は必ず取り交す。
何度か取引をしているお客様でも10万円以上の仕事は必ず業務委託契約書を交わす。
私の事務所では業務委託契約書を取り交すまでは業務を着手しません。
初めての取引先は、インターネットや近隣の情報収集をする。
裁判では、記録や証拠がものを言う。
口頭だけのやり取りは避ける。録音、メール、faxで証拠を残す。
裁判で勝っても、差し押さえるものがなければ回収できない。
ヤバイ人は取引口座、資産状況も探りを入れておく。
裁判では正義が強いのではなく、時間がある人が強いのである。
忙しい人は、泣き寝入りするしかないことを肝に命じる。
着手金、中間金をもらって、リスクを軽減させる。
あやいいときには、依頼を断る。
土地家屋調査士法で、「正当な理由なく依頼を拒んではならない。」
もちろん、正当な理由があれば依頼を断れます。
でも、本当のことを言えないときもあります。
「あなたに誠実さを感じない」とか「反社会勢力の方のように見える」とか「お金が払えなさそうな感じがする」
みたいに本当のことを言えないときには、
嘘はマズいですが
「業務の繁忙で新たな依頼が受けられない」
「忙しすぎて気力がない」
「体調不良」など
相手を怒らせない正当な依頼拒否の事由を探しましょう。
開業の予定の方、回収に苦労している人は参考にしていただければと思います。