積水ハウス事件から学ぶこと
積水ハウス事件が、驚愕だったのは、騙された会社が、まず大和ハウスにつぐ規模の業界のリーディングカンパニーだったこと、そして55億円という史上空前の損害額の大きさです。
この事件に関わった、土地家屋調査士、司法書士、何より積水ハウスの担当者は大変な思いをしたと思います。
今回は、この事件を教材にこのような事件に関わらないためにはどうすれば良いか?
関わってしまったときには、どのような対応すれば良いかを考えてみたいと思います。
こうした地面師事件のほとんどは、地主に成りすまして、実印や身分証明書を偽造して、他人の不動産を担保に借り入れをする。手付金を搾取する。売り飛ばすのが手口です。
この最たる、積水ハウス事件を振り返ります。
JR山手線五反田駅、徒歩3分の好立地に海喜館という旅館がありました。
所有者は、S子さん立地も良くバブル期は、旅館はとても繁盛していました。
しかし、だんだんと経営が悪化し2015年3月に旅館を廃業することになる。
2017年2月頃から、近所の証言ではS子さんを見かけなくなったそうです。
その頃、S子さんは体調をくずして入院をしていました。
そこに目を付けていたのが、地面師、内田マイクと北田文明、
S子さんが入院する直前の2016年12月には、旅館の脇にある月極め駐車場を借りる契約をしてS子さんと接触していた。
S子さんの個人情報を入手するためでした。
下調べもぬかりがない!
そして2017年2月S子さんの容態は悪化する。
そのあたりから、地面師グループとニセS子の動きが活発になります。
手始めに、実印とパスポートを偽造して、なりすましたニセS子が、旅館海喜館を担保に高利貸から2億円の融資を受けます。
つづいて地面師グループは、くだんの不動産会社へ売買の話を持ちかける。
不動産会社の営業マンとニセS子のエレベータでの何気ない会話
ニセS子「私の田舎も桜がきれいなの早く帰って桜が見たい」
本物のS子は、五反田の旅館育ちで他に故郷はない。
怪しいと感じた、くだんの不動産会社は寸前のところで契約を思いとどまった。
そして地面師グループは片っ端から、開発できそうな不動産会社に声をかける。
声を掛けられた業者は、ニセS子が本人かどうかパスポートの写真を持って近隣に聞き込みをする。
そして巷ではこの取引は怪しいと噂になります。
そして最後に残ったのが積水ハウスだった。
4月3日地面師グループとニセS子は、銀座の公証人役場で、偽造したパスポート、印鑑証明書を用意して公証人に本人確認を受ける。
4月13日積水ハウスシャーウッド住宅支店に出向き部長の決済を仰ぐ
4月20日部長、部長代理と売買条件について具体的な交渉に入る
4月24日、手付金12億円を支払いをする。決済は7月末とする。
5月10日「積水はだまされている」と記された内容証明郵便が積水ハウスに届く。
そして翌日も届き、この内容証明は合計4通積水ハウスに届いた。
これは所有者、本物のS子さんが弁護士に依頼して送ったものでした。
積水ハウスはこれを怪文書扱いして、なんとスルーする。
5月25日積水ハウスM常務の支持で、決済日6月1日に大幅に繰り上げる。
5月31日ニセS子は、本人確認の際に干支を聞かれて1944年のさる年であるにも関わらず、とり年と答える。
積水ハウスの司法書士が問い出すと単なるミスだと言い逃れた。
司法書士が偽造されたパスポートをペンライトで照射して調べる。
透かしが入っているか写真を変えていないか。
両方ともクリアして、このパスポートは本物だと判断された。
6月1日残代金48億円の一部を留保して決済が行われる。
支払われた合計55億5千万円は現金化されて泡と消える。
6月17日所有権移転の登記申請が却下されて詐欺が発覚
決済後の6月24日本物のS子さんは、病院のベッドで息を引き取る。
地面師グループ逮捕者17人
これが積水ハウス事件の概要です。
それでは、この事件を3つのポイントにまとめます!
1つ目は、聞き取りの重要性です。
司法書士がニセS子に干支を質問して、ニセS子が酉年と間違えるということがありました。
それも単なる間違いとしてスルーしたようです。
そこでさらに、住所、生年月日、父、母の名前、土地の取得の経緯を聞けなかったかと思います。
また、買取を検討した他の不動産会社はニセS子のパスポートの写真をもって、写真はS子に間違いないか近隣に聞き込みをしたそうです。
積水ハウスは十分に聞き込みをしなかったのでしょう。
2つ目は、書類の偽造です。
印鑑証明書とパスポートの偽造がされているようです。
今は偽造の技術が高いので簡単には見抜けません。
司法書士がペンライトで照射したが透かしもあり、偽造を見抜けなかったようです。
銀座の公証人役場でも、偽造をスルーして本人確認がされたようです。
さらにポイントカードなど氏名が記載されているようなものを提示してもらうこともできたのではと思います。
3つ目は、取引の不自然さです。
後でトラブルになる案件というのは、ほとんどが急がれます。
今回も、7月末の予定だった決済を6月1日に前倒しされた経緯があります。
決済が銀行振込ではなく、現金や小切手でされる。
権利証がなく、本人確認情報で登記する
売買金額が異常に安い
など通常ではない不自然さがあります。
今回は、極端な事例ですが、
仕事をしていてなにか違和感があると思ったら、
まず、十分に聞き取りをする。
つぎに、書類の偽造を疑ってみる
そして、仕事の通常ではない不自然さを疑ってみる
トラブルを避ける。
勇気をもって仕事を断るというのも大事だと思います。